平成2012月2日

申  入  書

岡山県知事
石井 正弘 様

NPO法人市民オンブズマンおかやま
                                              代表幹事 重田龍三

             不正経理の全庁的調査に関する申し入れ

 

本年10月、会計検査院が12の道府県について国の補助金の使途調査を行ったところ、
12道府県の全部で、約5億円の不正経理の存在が判明しました。岡山県は会計検査院
の検査対象になっておらず、県は毎日新聞の調査に対し「不正経理はないと考える。
内部調査を行う予定はない」旨回答されたとのことです。

しかしながら、

1 会計検査院が検査した12道府県の全部で不正経理が発見されている以上、きわ
めて高い確率で、類似の不正経理は全都道府県に及んでいるものと推定されるので
、岡山県のみが例外であるとは信じられません。

2 全都道府県について不正経理がなされていると推定される以上、よしんば当局
者が「岡山県には不正経理はない」と確信していても、県民の信頼をつなぐために
は全庁的な内部調査が実施されるべきです。上記の毎日新聞の調査では、会計検査
院の検査対象外であった
35都府県のうち22都府県が(しかも、その大半が「不正経
理はないと考える」旨回答しながらも)、全庁的調査を実施すると回答しています。

3 岡山県においても、平成8年秋に倉敷南地域保健センターのカラ出張が、職員
の内部告発によって判明しました。

当時、全国の都道府県においてカラ出張等の不正経理の発覚が相次いでおり、多
数の都道府県において全庁的な内部調査が実施されましたが、岡山県は「不正は一
部部局に限られた病理現象である」との理由により、私たちの要請にもかかわらず
、全庁的な調査は実施されませんでした。私たちは県保健福祉部全体についての不
正経理の存在を主張して住民監査請求、住民訴訟を行いましたが、当時の県情報公
開条例上、施行前の行政文書の開示請求が不可能であったため、個々の不正経理を
十分に特定するに足る資料を入手することができず、訴えは却下されました。

しかるに、12年後の本年に至っても、会計検査院の検査において不正経理が発見
されなかった道府県は皆無であり、しかも不正が発見された自治体の中には平成8
年当時に全庁調査を実施した自治体(北海道、青森県など)と、岡山県同様に実施
しなかった自治体(愛知県、京都府など)とが混在しています。

このような状況に鑑みれば、都道府県の不正経理はほとんど業病ともいうべき状
況にあること、それを根絶するには徹底した調査と対策が不可欠であることが明ら
かです。

4 かつ、前記の毎日新聞の調査で「全庁的調査を行わない」と回答した12県のう
ち、5県では平成8年当時に全庁的調査を実施しているので、岡山県のように、
「前にも後にも調査しない」県は7県にすぎません。このような、全国有数の頑迷
県に数えられるような事態は、県民全体の恥辱です。

5 現在岡山県の財政はきわめて危機的な状況にあり、その再建のために全県民の
理解と協力が求められています。この状況下で、県が不正経理の根絶に意欲を示さ
なければ、県財政の再建に県民の理解と協力を期待することは不可能です。

 このような観点から、私たちは、岡山県において以下のとおりの内容の全庁的調
査を実施されるよう、強く求めるものです。

 @ 知事自身を責任者として、全庁的な調査を行うこと。

  知事は県の予算執行権限者であり行政の最高責任者なので、全職員に指揮命
令を下すことができる知事でなければ、徹底した調査は困難です。

A 知事自身を長とする、第三者による調査委員会を設置して調査すること。

  県職員による内部調査のみによっては、不正経理が根絶できないことは、過
去に全庁的調査を実施した自治体においても会計検査院の検査で不正が指摘され
ていることから明らかなので、外部の弁護士、公認会計士等の中立的な専門家に
よる調査を実施する必要があります。

B 公費全部について、県の全組織を対象に調査すること。

調査の対象は、国の補助事業と県費単独事業、本庁と出先を問わず、警察・議会
・独立行政委員会・外郭団体などを含め一切の「聖域」を設けることなく、県の
支出する公費の全部を対象として実施すべきです。

C 可能な限り過去に遡って調査すること。

       平成8年当時、内部告発をした職員は、不正経理は非常に早くから行われて
  いたと証言しています。不正経理の根絶のためには、損害賠償請求権の時効消滅
  の成否に関係なく、ありのままの事実が明らかにされることが重要です。また、
  岐阜県や福岡県におけるように、裏金の預金通帳や裏帳簿が作成されていた可能
  性もあります。従って、法律的な請求権の存否にとらわれることなく、可能な限
  り過去にさかのぼって徹底的な調査が行われるべきです。


D 第三者調査委員が十分な調査を行うに足る、権限と時間と経費とを与えること。

  県組織全体について徹底した調査を行うには、多数の補助者と十分な時間が
必要です。少なくとも包括外部監査人なみの権限と時間と経費を付与して、徹底
的な調査を行うべきです。

E 調査の経緯と結果について十分な情報公開を行うこと。

  不正経理の再発防止を最終的に担保するには、県民による監視が不可欠です
調査それ自体についても、再発防止のための施策についても、基礎となる原資
料を含めて全容が公開されて十分な情報が共有されなければ、県民の信頼をかち
えることはできません。従って、調査中にもできる限りの情報提供を行うととも
に、調査終了後には調査過程の情報や原資料をも含めた徹底的な情報公開を行う
べきです。

  上記のとおり申し入れるとともに、貴職のご見解をうかがいたいと存じますので
、平成
201225日までに書面をもってご回答くださいますよう、お願い申し上げます。

以上
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会第158号
平成20年12月25日      県知事からの回答

「本県では、会計検査院の調査が継続中であり、今後関係部局からの報告を踏まえ、適切に
対応していきたいと考えております。なお、行政にたいする県民の信頼を損なうことのないよう、
関係法令等の遵守及び公金の取扱いの重要性を十分認識し、適正な経理処理を行うよう指示
しています」

【回答書は巻末に在ります】