(第一章)下水に流した41億円


<9月16日に何が起こったか?>

・平成11年(1999年)9月16日、自治大臣は岡山市に対して、「下水道の利用人口について、昭和45年度から平成10年度までの29年間、『資料に作為を加え、虚偽の記載』をしていた」という理由で、その間の交付金のうち19億8481万7000円、及び制裁の意味での加算金21億2248万7000円、合計41億0730万4000円の返還を命じました。

<あっさり降参、あっさり可決!>
・岡山市は、しごくあっさりと命令に応じました。
市長は9月定例議会で、「返済の財源には、平成11年度の交付金の増額分37億7900万円、未利用地売却で1億1000万円、下水道管理費などの削減で1億9473万円、地域振興補助金2000万円などをあてる」と説明し、「市民には迷惑はかけない」と大見得を切りました。市議会はこれまたしごくあっさりとこの提案を可決しました。
9月28日、市は涼しい顔で全額を支払いました。私たち市民には何の説明もなく。私たちの開いた口がまだ閉まりきらないうちに。

<交付金?なんだそりゃ?>
・大半の市町村では、自分の収入(市税)だけでは収入が不足します。そこで国が足りない分をプレゼントしてくれます。これが「交付金」です。ただし、欲しいだけくれるわけではありません。
自治省は「基準財政需要額」という数字をはじきだします。「○○市はコレコレの事業をしているからコレコレの金が最低限必要だろう。だから、それに足りないだけ交付金をあげよう。」というわけです。市町村の最低限の生活費を保障する、みたいなものです。

<下水と何の関係がある?>
・「基準財政需要額」の計算、つまり「コレコレの事業」の中には下水道も入っています。計算に使う数字の中には、下水道の利用人口が入っています。ということは、利用人口を水増しすれば、そのぶん交付金を(不当に)余分にもらえます。岡山市は29年間にわたってコレをやっていたのです。

<どうやって?>
・下水道の利用人口は、昔から、住民登録をもとにした「定住者人口」で計算しなければならない、ということになっていました。
岡山市はどうやったかというと、年によっては「将来の計画人口」、年によっては「昼間人口」(下水道の通っている市街地中心部は、昼間は人間の数が増える)、また年によっては『根拠不明の人口』を使っていました。要するに無茶苦茶です。

やる方もやる方ですが、だまされる方もだまされる方です。
(だいたい、ホントにだまされていたんでしょうか?『見て見ぬフリ』という言葉も辞書にはあります。)岡山市は下水道の普及率を50%台と発表していたのですが、国の基準どおりだと30%台だということです!<加算金>・要するに、金利です。10・95%。きょうび、えらい高い。
その金利が21億なんぼです。
元金より多い!この高金利は、「作為・虚偽」の場合、つまり「わざとやりやがって」という場合に課せられる特別のもので、一種の罰金みたいなものです。法律にちゃんと書いてあるので、いかんともしがたい。

<市長、「市民に迷惑はかけない」ですって?>
・ご冗談でしょう、市長。
国に返した金の財源は、交付金にしても、未利用土地にしても、事業資金にしても、市の財産ですよ。私たち市民のお金ですよ。
過去もらいすぎていた19億なんぼはさておき、21億なんぼの加算金は、もともと市の財布から出ていくはずのものではなかったのですよ。市はそれを使うことも、貯めておくこともできたのですよ。
市長、今のはギャグですか?それとも正気ではないのですか?重ねて申しますが、市長、あれは市民のお金ですよ。あなたのお金ではないのですよ。

<責任者、出てこい!>

・29年間には市長が3人代わりました。
故岡崎平夫氏13年、故松本一氏8年、安宅敬祐氏8年です。その間、市議会で「下水道普及率の数字がおかしいのではないか」と指摘されたこともありました。それも結局はうやむやに終わっています。
市当局は何を考えていたのでしょう?市議会は何を呆けていたのでしょう?21億円の損害は、誰に責任があるのでしょう?誰が損害を弁償するのでしょう?いまのところ、市は責任の追及をしようとしているようには見えません。
岡山市がこのままですまそうとするのなら、追及は私たち自身で行いましょう。なぜなら、損害を受けたのは私たち市民なのですから。
                                        <文責:光成卓明>


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                    申 入 書


               岡山市下水道局、不正交付金返還事件について
                                           
                                              平成11年9月27日

岡山市長 萩原 誠司 様
                                         市民オンブズマンおかやま
                                              代表   重田龍三
                                                    他 5名

 岡山市が下水道に関する地方交付税算定基礎数値の虚偽報告により、昭和45年から平成10年度までの29年間の交付金19億8500万円及び作為的行為に対しての制裁金21億1900万円、合計41億円余の返還を国に求められました。

 その返済計画は11年度交付金37億7900万円、未利用地売却で1億1千万円、下水道管理費等の削減で1億9473万円、地域振興補助金2000万円を充当する案件を、9月定例市議会で可決しました。

 本事件は元市長岡崎平夫氏、松本 一氏、前市長安宅敬祐氏の時代にまで溯求されるべきものであり、また平成3年市議会で算定方式の誤りを指摘されたに拘わらず、今日に及んだ責任は行政の怠慢であります。また監督指導の立場にある岡山県はチェック機能が欠落していました。

 今昔物語の中に「999匹の片目猿」という中国の寓話があります。行政の姿勢は、両眼をもつ者の意見を無視し、事なかれ主義の専横を諒とし、その付けが今日の結果であります。

 差額交付金返還はいたしかたないとして、制裁金は過酷なものであり、全市民にとって耐え難い苦痛であります。自治省の決定をそのまま受け入れた市長及び議会の決定はまことに残念であります。

 この制裁金は、当然、虚偽報告を行った当時の責任者が市に弁償すべきであり、それによる損害を市民に転嫁することは許されません。事実を徹底的に究明し、責任者への賠償請求を適切に行われるよう、強く申し入れます。
                                                    以上
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            申 入 書    



岡 山 市 長
萩 原 誠 司  殿


                                         平成11年11月4日

                                           岡山市乙多見347番地                                          市民オンブズマンおかやま

                                          代 表    東 隆司 
                                          副代表   須藤暁子 
                                          同      光成卓明 
     
申 入 の 趣 旨
1.岡山市の下水道利用人口の虚偽申告に関して、国から岡山市に対して支払を命ぜられた加算金21億1900万円のうち、昭和55年度分から平成10年度分までの19ケ年分について、速やかに責任の所在を究明し、市に対して賠償責任ありと考えられる者全員に対して、損害賠償請求の措置をとられたい。

2.上記の究明および賠償請求の全過程については、全市民に対して、そのつど余すところなく公表せられたい。

3.とりわけ、昭和55年度分にかかる加算金については、不法行為者に対する損害賠償請求の除斥期間(行為のときより20年)が切迫していると考えられるので、万が一にもこれについて除斥期間の徒過によって損害賠償請求が不可能となることのないよう、緊急の措置を講ぜられたい。

申 入 の 理 由

1.さる9月16日、国(自治省)は、岡山市に対し、下水道利用人口の報告に関して、「資料に作為を加え、虚偽の記載があった」として、昭和45年度から平成10年度までの29年間の交付金のうち19億8500万円と、これに対する制裁としての加算金21億1900万円、合計41億400万円の返還を命じました。岡山市はすでにこれを支払ったと聞いております。

2.国から支払いを命ぜられた金員のうち、加算金部分の21億1900万円については、当時の市の責任者が虚偽の数値を報告することがなかったならば、岡山市が支出する必要のなかったはずのものです。
してみれば、岡山市は、当該虚偽報告について責任のある者に対して、民法709条に基づき、損害賠償請求権を有しているはずであり、これは市の資産といえるものです。そして、市の資産とは、市民全員の共有財産にほかなりません。

3.民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が損害を知ったときから3年を経過することによって時効消滅します。また、行為がなされたときから20年の除斥期間を経過することによっても消滅します。
市が往時の虚偽報告の責任者に対する請求を行わずにいれば、本来市が有している賠償請求権は、次々に時効によって消滅してしまいます。
従って、当時の責任の所在の究明と責任者に対する賠償請求の措置は、市にとって焦眉の課題です。

4.これらの不正行為の究明・請求の過程は、密室状態で行われるべきではなく、その進捗状況と到達結果は、逐一全市民に対して明らかにされるべきものと信じます。
なぜならば、これらは市の、すなわち市民共有の財産にかかわる問題であり、その状況を知ることは市民ひとりひとりの当然の権利です。
このたびの不正の発覚により、さらにそれが全国に報道されたことによって、心に傷を負わなかった岡山市民はひとりとしておりません。この不正行為の責任の追求過程は、全ての市民が最大の関心と不安とをもって注視しているところです。
 さきの不正行為自体を、29年の長きにわたって続けることができた最大の理由は、それが市庁舎という密室の中で処理されてきたからにほかなりません。市の行政に対する市民の信頼(それは、今回の事件によって地に堕ちております)を回復するために、調査・追求の全過程を市民に対して公表することが必要不可欠です。

5.さきに述べたとおり、不法行為に基づく損害賠償請求権は、行為の時点から20年が経過することによって消滅します。交付金算定のもととなる下水道利用人口についての報告が、毎年度いつの時点でなされるのかはわれわれ市民にとって詳らかではありませんが、翌年度分交付金にかかわる報告は、前年度下半期中になされるのではないかと推測いたします。してみれば、昭和55年度分にかかわる加算金に関しては、20年の除斥期間の経過が目前に近づいているのではないかと思われます。その期間を徒過すれば、昭和55年度分にかかる加算金分の賠償請求権は消滅してしまいます。この請求権を消滅させないためには、市において緊急に責任の所在を調査し、法的賠償責任のある者に対する訴訟提起その他の措置をとらなければなりません。

6.もし懈怠によって請求権を失うようなことがあれば、それは市民全体に対する背信行為となり、全市民が市当局に対して抜きがたい不信を懐くことになりましょう。
そのようなことがないことを信じつつ、かつ祈りつつ、本申入を致します。