岡山県職員措置請求書

        監査請求の趣旨

1.岡山県議会議員井手紘一郎、同中塚正人、同福田通雅、同藤村欣裕が平成14年4月15日から同月21日の間に行ったチェコ及びオーストリアへの海外視察旅行、
2.岡山県議会議員小枝英勲、同原寿男が平成14年4月20日から同月28日の間に行ったドイツ及びオランダへの海外視察旅行、
3.岡山県議会議員長瀬泰志、同住吉良久が平成14年5月27日から同年6月8日の間に行ったイギリス、ベルギー及びオランダへの海外視察旅行、
4.岡山県議会議員蓮岡靖之が平成14年6月30日から同年7月10日の間に行ったイタリア、イギリス及びオーストリアへの海外視察旅行、
5.岡山県議会議員戸室敦雄、同元原敏治が平成14年7月25日から同年8月4日の間に行ったブラジル及びアルゼンチンへの海外視察旅行、の各航空運賃及び現地交通費、及び、
6.岡山県議会議員住吉良久が平成14年8月2日から同年8月7日の間に行った中華人民共和国への海外視察旅行の旅費、について、厳重に監査せられたい。

        監査請求の理由

1.岡山県議会議員井手紘一郎、同中塚正人、同福田通雅、同藤村欣裕は、平成14年4月15日から同月21日の間に、チェコ及びオーストリアを目的地とする海外視察出張旅行を行った。
この海外視察旅行について、井手紘一郎・中塚正人に対しては航空運賃各79万円及び現地交通費各44万1820円が、福田通雅・藤村欣裕に対しては航空運賃各30万8000円及び現地交通費各44万1820円が、それぞれ支出されている。
2.岡山県議会議員小枝英勲、同原寿男は、平成14年4月20日から同月28日の間に、ドイツ及びオランダを目的地とする海外視察出張旅行を行った。この海外視察旅行について、小枝英勲に対しては航空運賃37万1620円及び現地交通費34万9160円が、原寿男に対しては航空運賃18万9620円及び現地交通費34万9160円が、それぞれ支出されている。
3.岡山県議会議員長瀬泰志、同住吉良久は、平成14年5月27日から同年6月8日の間に、イギリス、ベルギー及びオランダを目的地とする海外視察出張旅行を行った。
 この海外視察旅行について、長瀬泰志・住吉良久に対し、航空運賃各53万円及び現地交通費各4万4000円がそれぞれ支出されている。
4.岡山県議会議員蓮岡靖之は、平成14年6月30日から同年7月10日の間に、イタリア、イギリス及びオーストリアを目的地とする海外視察出張旅行を行った。
この海外視察旅行について、蓮岡靖之に対し、航空運賃13万円及び現地交通費15万9000円が支出されている。

5.岡山県議会議員戸室敦雄、同元原敏治は、平成14年7月25日から同年8月4日の間に、ブラジル及びアルゼンチンを目的地とするの海外視察出張旅行を行った。
この海外視察旅行について、戸室敦雄に対しては航空運賃40万円及び現地交通費31万5470円が、元原敏治に対しては航空運賃40万円及び現地交通費38万円が、それぞれ支出されている。
6.岡山県議会議員住吉良久は、平成14年8月2日から同年8月7日の間に、中華人民共和国を目的地とする海外視察出張旅行を行った。
 この海外視察旅行について住吉良久に対し、旅費として合計26万6040円が支出されている。
7.「岡山県議会の議員の報酬及び費用弁償等に関する条例」によれば、議会の議員がその職務を行うために外国旅行をした場合における費用の弁償については、「国家公務員等の旅費に関する法律」中指定職の職務にある者の外国旅行に関する規定の例により算出した額とする旨定められている(同条例3条2項)。
8.しかるに、前記1・2・3・4・6の各旅行については、精算の際に旅行代理店作成の、見積書と全く同一の内容の「搭乗証明書」が提出されているのみで、領収証さえ提出されていない。5の旅行については領収証が提出されているが、この内容も見積書と全く同一である。そして、どの旅行の搭乗証明書・領収証についても、現実に搭乗した航空運賃明細や、現地交通費の内訳明細は、全く記載・添付されていない。
9.「国家公務員等の旅費に関する法律」によれば、外国旅行の交通費は鉄道賃・船賃・航空賃・車賃に分けて算定するものとされている。従って、内訳明細を示さない「現地交通費」の支出は、それ自体、前記「岡山県議会の議員の報酬及び費用弁償等に関する条例」3条2項(それが準拠する「国家公務員等の旅費に関する法律」)に違反している。
10.「国家公務員等の旅費に関する法律」34条1項によれば、外国旅行の航空賃は、当該航空路の運賃等級の区分に応じて算定されるものとされている。従って、外国旅行に際して利用した航空便・その運賃等級の区分・運賃の明細が明らかにされるのでなければ、航空賃を算定することは不可能である。この法律所定の方法に基づかないでなされた「航空運賃」の支出は、それ自体、前記「岡山県議会の議員の報酬及び費用弁償等に関する条例」3条2項(それが準拠する「国家公務員等の旅費に関する法律」)に違反している。
11.「国家公務員等の旅費に関する法律」13条は「旅費(概算払いに係る旅費を含む。)の支給を受けようとする旅行者及び概算払いに係る旅費の支給を受けた旅行者でその精算をしようとするものは、所定の請求書に必要な書類を添えて、これを当該旅費の支出又は支払をする者(以下「支出官等」という。)に提出しなければならない。この場合において、必要な添付書類の全部または一部を提出しなかった者は、その請求にかかる旅費額のうちその書類を提出しなかったためその旅費の必要が明らかにされなかった部分の金額の支給を受けることができない。」と定めている。
 本件1・2・3・4・6の各旅行の場合には、前記のとおり領収書類の添付がなく、旅行会社作成の「搭乗証明書」なるものが添付されているのみであるし、5の旅行の場合にも航空便・現地交通費の明細のない見積どおりの(正規のものか否か疑わしい)「領収証」が添付されているのみである。これらは法が予定する「必要な書類」とはいえないので、本件各支出はこの点からも違法である。
 なお、平成148月9日、札幌市監査委員の旅行費用に係る措置請求に対する勧告(札監第383号)によれば、航空賃についての判断として「見積はあくまでも見積にとどまり、日程と旅費が見積記載のとおりであったことをもって過不足がないという概算払いの精算については、これを是認することができない。かような精算をもって、実質的に精算されているとするには明かに不十分であり、航空運賃の支払額が証明できる書類の提出を受けて現実の支出額を確認した上で精算を行うことが不可欠であると考える。」としている。
12.6の旅行については、玉野渋川ライオンズクラブがクラブの事業として玉野市の補助金(事業費総額148万9546円中の70万円)の支出を得て実施しており、住吉良久はその役員(同人は同クラブの「YE国際サービス委員長」を勤めている)として参加している。従って6の旅行は、県議会ないし県議会議員の役職やその職務としての視察とは全く異なる目的でなされたものなので、岡山県が旅費を支出すべき旅行ではなく、その支出は違法である。
13.(1)いずれの旅行についても、航空運賃が、近時割引競争によって市場価格が極度に低廉になっているにもかかわらず、異常に高額である。
ちなみに格安航空券(ビジネスクラス)を見ると(平成141211日現在)
   1・ヨーロッパ往復3ヶ月有効で259000円:2人以上<東京発>
     2・ヨーロッパ往復3ヶ月有効で210000円〜<大阪発>
     3・同上(1stクラス)6ヶ月有効で389000円〜<大阪発>
     4・北京往復1ヶ月有効で75000円〜<東京発>等の状況である。
 しかも前記のとおり、1・2の各旅行については、一緒に出張した議員によって搭乗した航空便のクラスが異なるというきわめて不自然な結果となっている。「航空運賃」なるものが、実額を超過しているのではないかという疑いすら持たれる。
 (2)1・2・4・5の各旅行については、現地交通費が異常に高額である。
しかも前記のとおり現地交通費の内訳明細は全く明らかにされていないので、「現地交通費」なるものが、実額を超過しているのではないかという疑いが持たれる。
 (3)従って、これらの支出は、「岡山県議会の議員の報酬及び費用弁償等に関する条例」に合致しているか否かにかかわらず、地方財政法4条1項に違反している。
14.県議会議員の海外旅行は、議員歴二期以上150万円、新人60万円を上限とし、任期4年中に原則二回までを目安に実施している。これは単なる「申し合わせ」によるもので、何ら法的根拠がなく、極めて曖昧な執行である。この「申し合わせ」により、旅行費用は見積金額どおり執行され、予算消化の数字合わせの手段となった陋習である。複数の議員が同じ目的地への旅行で、異なった航空運賃が見積もられている事実はその証左といえる。
よって本件各旅費について厳正な監査を行い、岡山県の被った損害を補填するよう、地方自治法第242条1項の規程により、証拠書類を添付して必要な措置を請求する。

 

 平成15年2月14日

                                  請求人:記名、捺印、職業

岡山県監査委員 殿