岡山県職員措置請求書
1. 岡山県知事に対する措置請求の要旨
岡山県が、岡山県議会議員小田春人及び元岡山県議会議員桑山博之に対し、平成17年8月15日から同月8月24日の期間ドイツ・スウェーデン・デンマークを視察先として行った海外視察の旅費として支払った金員(小田春人につき金1、108,154円、桑山博之につき1,107,444円)の支出のうち、各金251,100円の支出は違法なので、
@.小田春人に対し金251,100円を岡山県に返還するよう、
A.桑山博之に対し金251,100円を岡山県に返還するよう、
B.石井正弘(岡山県知事)及び青山勝(支出負担行為につき専決決裁をした岡山県議会事務局総務課長)に対し各自金502,200円を岡山県に賠償するよう、
それぞれ請求することを求める。
2.
措置請求の理由
(1) 岡山県議会議員小田春人、同(当時)桑山博之は、平成17年8月15日から同月8月24日の期間、ドイツ・スウェーデン・デンマークを視察先として海外視察を行った。
(2) 岡山県は、前記海外視察の旅費として、前記両名各自に対し、
@.小田春人に対し、平成17年8月12日ころ、概算払いとして金1,090,410円を支払い、
A.桑山博之に対し、平成17年8月12日ころ、概算払いとして金1,089,700円を支払い、
B.平成17年9月22日ころ、両名に対しそれぞれ、精算として金17,744円ずつを支払った。
概算払い及び精算の際の支出負担行為は、いずれも、当時の岡山県議会事務局総務課長青山勝が専決で決裁をした。
(3) 株式会社ジェイティービーは、
@.平成17年8月2日本件海外視察についての旅程表及び旅行代金見積書を、
A.平成17年9月7日同じく旅行代金精算書を、
それぞれ作成して、岡山県に提出した。前項記載の旅費の支払は、これらの旅程表、旅行代金見積書及び旅行代金精算書にもとづいてなされている。
(4)株式会社ジェイティービーの旅行代金精算書によれば、現地旅費として、@.8月16日 フランクフルト空港からフランクフルト市内インターコンチネンタルホテルまでの移動のための専用車代として金35,000円(見積書でも同額)、
A.8月17日 フランクフルト「ゴミプログラム」及び「環境エコ」視察のための専用車借上代として金85,000円、
B.8月18日 インターコンチネンタルホテルからフランクフルト空港までの移動のための専用車借上代として金35,000円(見積書でも同額)、
C.8月18日 ストックホルム空港から昼食場所を経てストックホルム市内のホテル「スカンデイク」までの移動のための専用車代として金75,000円(見積書でも同額)、
D.8月20日 「駅〜視察後ホテル」(後記マルメ駅から「オアスン橋」を経てコペンハーゲン市内のホテルスカンデイクまでと考えられるが、前記「スカンデイク」からストックホルム駅までの車代を含む可能性もある)の専用車代として金150,000円(見積書ではホテル〜駅間の車代60,000円、駅〜ホテル間の車代45,000円とされている)、
E.8月22日 日本貿易機構及び「ニールスボーア研究所」視察のための専用車借上代として金125,000円(見積書では140,000円)、
F.8月23日 前記コペンハーゲン「スカンデイク」からコペンハーゲン空港までの専用車代として金45,000円(見積書でも同額)、
合計金55万円(見積書では52万円)が計上されている。
これらの専用車代とは別にストックホルム〜マルメ間の鉄道代金1人13,000円が計上されており(見積書ではストックホルム〜コペンハーゲン間の鉄道代金1人18,000円が計上されている)、さらに、8月19日ストックホルムでのタクシーの領収証3通計11,134円分、及び8月21日コペンハーゲンでのタクシーの領収証3通計3,592円分が添付されている。
岡山県が小田・桑山両名に支払った旅費には、各295,363円の現地交通費が含まれているが、当該金額は、
@ 前記精算書記載の計55万円の専用車代の2分の1宛にあたる金275,000円、
A 前記タクシー代金の2分の1宛にあたる金7,363円、
B ストックホルム〜マルメ間の一人分の列車料金13,000円、
の合計である。
(5)岡山県議会議員の海外視察の旅行費用については、「岡山県議会の議員の報酬及び費用弁償等に関する条例」第3条2項但書において、「外国旅行の場合における費用弁償については、国家公務員等の旅費に関する法律(以下、「法」という)中指定職の職務にある者の外国旅行に関する規定の例により算出した額とする」と定められている。
法は、
@.第1章(総則)中の第7条で「旅費は、最も経済的な通常の経路及び方法により旅行した場合の旅費により計算する。但し、公務上の必要または天災その他やむを得ない事情により最も経済的な通常の経路または方法によって旅行し難い場合には、その現によった経路及び方法によって計算する。」と定め、
A.第3章(外国旅行の旅費)中の第32条において鉄道賃、第33条において船賃、第34条1項において航空賃について詳細な定めをしたうえで、第34条2項において車賃について、「車賃の額は、実費額による。」と定めている。
(6)本件視察において利用したとされる専用車代は、いずれも、専用車使用の必要がなく、費用が高額にすぎるので、「最も経済的な通常の経路及び方法により旅行した場合」に該当せず、また、専用車を使用せざるを得ない「公務上の必要または天災その他やむを得ない事情」はなかったから、「最も経済的な友情の経路及び方法により旅行した場合」の推定費用を超える部分の支出は違法である。
@.フランクフルト国際空港からインターコンチネンタルホテルの存在するフランクフルト市中心部までは約12qであり、地下鉄が運行していて、その料金は3ユーロ(426円)である。タクシーを利用した場合の推定料金は25ユーロ(3,550円)で、高くとも5,000円を超えないものと推定される。所用時間は地下鉄利用の場合15分(フランクフルト中央駅からホテルまでは500メートル)、タクシーの場合20分である。
A.フランクフルトでの視察先「ゴミプログラム」及び「環境エコ」は所在場所が明かにされていないが、フランクフルト国際空港〜インターコンチネンタルホテル間のタクシー料金と専用車代金の価格比から判断すれば、タクシーを利用した場合の料金は10,000円を超えないと推定される。
B.ストックホルム国際空港からホテル「スカンデイク」の存在するストックホルム市中心部までは直通の高速列車Arlanda Express Trainが運行しており、その料金は190SEK(2,800円)である。該ホテルはストックホルム中央駅の真向かいにある。
C.ストックホルムからマルメ、オアスン橋を経てコペンハーゲンまでは、直通列車が運転されており(オアスン橋は道路・鉄道併用橋である)、コペンハーゲンまでこの列車を利用した場合の料金は1人あたり18,000円である。
D.コペンハーゲンでの日本貿易機構及び「ニールスボーア研究所」の視察にタクシーを利用した場合の料金は、10,000円を超えないものと推定される。
E.コペンハーゲン国際空港はコペンハーゲン「スカンデイク」から約12qの距離にあり、タクシーを利用した場合の料金は5,000円を超えないものと推定される。
よって、
8月16日フランクフルト空港〜ホテル間の専用車代35,000円中の30,000円、
8月17日「ゴミプログラム」等視察の専用車借上代85,000円中の75,000円、
8月18日ホテル〜フランクフルト空港間の専用車代35,000円中の30,000円、
同じくストックホルム空港〜ホテル間の専用車代75,000円中の72,200円、」
8月20日の専用車代150,000円から、マルメ〜コペンハーゲン間も列車を利用した場合の列車代の増加額10,000円を控除した140,000円、
8月22日日本貿易機構等視察の際の専用車代125,000円中の115,000円、
8月23日ホテル〜コペンハーゲン空港間の専用車代45,000円中の40、000円、
合計550,000円中の502,200円の支出は違法である。
(7)前項で指摘したとおり、本件の専用車代はいずれも合理的必要性が全くないうえに極端に高額なので、株式会社ジェイティービーの旅行代金精算書に記載されたとおりの支払が現実になされたとは考えられず、高額・架空の専用車代を計上することによって岡山県に金員を支出させ、これを別の使途に流用したものと推定される。本件の専用車代の支出はこの点からも違法である。
(8)よって、本件現地交通費の過剰支払分502,200円の支出は違法なので、
@.小田春人にかかる費用として支出された金251,100円について、支出を受けた小田春人は県に対する返還義務があり、
A.桑山博之にかかる費用として支出された金251,100円について、支出を受けた桑山博之は県に対する返還義務があり、
B.両名分の合計金額502,200円について、各支出負担行為を専決決裁した当該職員である議会事務局総務課長青山勝、及び、本来の決裁権者である知事石井正弘に、岡山県に対する賠償義務がある。
(9)よって、地方自治法第242条第1項の規定に基づき、証拠書類を添付して、頭書のとおり、厳正な措置を請求する。
3.
添付書類 証拠書類各写 各 1 通
平成18年7月14日
請求人
住所
氏名 特定非営利活動法人市民オンブズマンおかやま
代表者代表幹事 重田龍三
岡山県監査委員 殿