岡山市議会の政務調査費の査定について

 

                    平成21年 2月25日

                        非営利特定活動法人 市民オンブズマンおかやま

                        代表者代表理事   重  田  龍  三

 

第1 基本的な考え方

1 政務調査費の性質

岡山市議会の政務調査費は実費弁償を原則とする補助金の一種であり、地方自治法第100条第14、15項、及びこれに
基づき制定された「岡山市議会の各会派に対する政務調査費の交付に関する条例」(以下「条例」という)に基づいて支給さ
れる。

地方自治法第100条第14項は「普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資する
ため必要な経費の一部として、政務調査費を交付することがで
きる」と定めている。

条例はこれに基づき、第1条で政務調査費が「岡山市議会議員の調査研究に資するための経費の一部」として交付され
ものであること、第5条で「会派は、政務調査費を別表に定める使途基準に従って使用するものとし、市政に関する調査研究
のための経費以外のものにあててはならない」こと、第8条で会派が「その年度において市政の調査研究に資するため
必要な経費として支出した総額」を控除して残余があるときは市に返還すべきことを、それぞれ定めている。また第5条の別
表では、「研究研修費」「調査旅費」「資料作成費」「資料購入費」「広報費」「広聴費」「人件費」「事務費」「雑費」の9種類の
使途費目を定め、各費目で支出できる経費の種類を定めている。

従って、岡山市議会の政務調査費は、「その年度において」支出された、「市政の調査研究に資するため必要な経費」に
限って、支出が認められる。

 

2 市議会議員の活動と政務調査費

市議会議員の活動は、政務調査費との関係では概念上、「政治活動」と「私的活動」に区分することができ、そのうち「政
治活動」は「政務調査活動」と「政務調査以外の政治活動」に区分することができる。これらの活動のうちの「政務調査活動」
にかかる、条例別表に定める使途基準に該当するものについてのみ、政務調査費から支出することが許される。

3 本査定の基準

本査定では、1、2で述べたことに基づき、主として「市政の調査研究に資するために必要な経費」と判断されるか否かと
いう観点から、岡山市議会の各会派の平成19年度の政務調査費について、本オンブズマンとして査定した。

各会派の政務調査費にかかる収支報告書に記載された支出のうち、

ⅰ 会派または所属市議会議員の「政務調査活動」にかかる支出(「市政の調査研究に資するために必要な経費」)とし
て適切と考えられたものについてはその全額を認め、

ⅱ 「私的活動」または「政務調査以外の政治活動」にかかる支出と考えられたものにつ
 いては全額を否認し、

  ⅲ 区別が困難と考えられたものについては按分して一部の支弁を認めた。

 

なお「条例」別表は、研究研修費以外の費目については、全て「会派」が行う活動のために必要な経費である旨定めてい
るので、これらの費目の支出は「会派」自体の行う政務調査活動に限定され、会派所属議員が個人的に行う政務調査活動
の経費を支弁することは認められない、と解する余地がある。

同様の条例をそのように解した裁判例(函館地判平成17年8月22日)もあるが、本査定では、会派所属の市議会議員が
その政務調査活動のために支出したと考えられる費用については、これを会派が支出したものとして取り扱った。

地方自治法及び条例はいずれも「議員の調査研究に資するための経費の一部」を交付すると定めているし、また、岡山
市議会の各会派の政務調査費の支出の大半が市議会議員個人の支出であることが、開示された領収書類等から明らか
だったので、市議会議員個人の支出を否認することはあまりにも実情に合わないと考えたからである。

  

第2 費目別の査定基準

0 基本的共通事項

 ⅰ 対象年度以外の時期の経費の支出は認めない。

 ⅱ 領収書がない支出は認めない。

ⅲ 領収書の日付がないものは認めない。かつ推定不能のものは認めない。

1 研究研修費

  研究研修費は、「会派が、研究会、研修会を開催するために必要な経費又は会派の所属する議員等が他の団体の開催
する研究会、研修会に参加するため要する経費(会場費、器材借上費、講師謝金、出席者負担金、交通費、旅費、宿泊費
等)」(条例別表)である。

 この費目については、①研修などが政務調査としての適切かどうか、②研修費用の金額が適切かどうか、③飲食を伴う研
修などの取扱い、が大きな問題である。

 研修などが政務調査として適切であるためには、「市政の調査研究に資するために必要な経費」という政務調査費の趣旨
に照らして、研修などの目的がこの趣旨にかなっていて、かつその費用が目的、効果との関係で著しく高額ではないことが
必要である。

 ⅰ 研修などの参加料・受講料・資料費

ア その研修などが政務調査として適切と認められる場合、会合の参加費、受講料、資料費の全額を認める。

イ 飲食を伴う研修の費用、及び懇親会費は認めない。飲食を伴う会議、研修などの費用は政務調査費から支弁する
  ことに根本的になじまないし、懇親会は参加者の懇親のために行われる飲食の会であり、研修に必要とは認めら
  れない。
ウ 研修などの参加費が2万円を超える場合、参加費に懇親会費などの研修以外の費用が混入しているものとみな
  し、研修への参加そのものの費用の実額が証明されていない限り、2万円を超える部分は認めない。

  但し、

(1)  他の会派のデータ等から、研修参加費用の実額が推定できる場合には、その実額まで認める。

(2) 今後、研修参加費用の実額が証明された場合には、再検討する余地がある。

エ 研修や開催団体の名が不明のものは認めない。但し、今後研修名・開催団体名が証明されれば、それに従って
  再検討する余地がある。

ⅱ 団体会費

 団体会費は団体に所属するための費用である。団体に所属することは、本人の政治的・社会的信条または私的関心に
 よるものと考えられ、市政に関する研修とは考えられないので、団体会費は政務調査の費用とは認められない。

但し、団体が開催する研修等への参加費は、団体の会員であるか否かに関係なく、ⅰの基準により判断する。

 ⅲ 会場費

その研修などが政務調査として適切と認められる場合、全額を認める。会場、目的が不明なもの、及び過度に高額な
  ものは認めない。

飲食を伴う研修の会場費は認めない。

会場費が高額な場合には飲食を伴うことが疑われるので、実質的に飲食費であると判断された場合には認めない。
  否認したものについて、その全部又は一部が会場費そのものであることが証明された場合には、再検討する余地が
  ある。

 ⅳ 茶菓代、弁当代

茶菓代は常識外に高額でない限り認める。弁当代は食事代なので、講師のものを除き、原則として認めない。

 ⅴ 検査料

 原則として全額認める。

 ⅵ 講演料・講師旅費

講演の趣旨が政務調査として適切と考えられる場合には、全額を認める。講演内容が不明のものは認めない。(但し、
  内容が証明されれば再検討する余地がある。)

講演の受講者が議員だけでないと考えられる場合、受講者のうちの議員の割合(推定を含む)により按分して認める。

 ⅶ 施設入館料

施設が政務調査の対象として適切と考えられる場合には全額を認める。適切と考えられないもの、又は施設が不明の
  ものは認めない。

ⅷ 登記印紙

 登記事項の調査は政務調査と一応考えられるので、原則として全額を認める。

 ⅸ 収入印紙

 収入印紙は契約書、訴状などに貼付するもので、これらは政務調査とは考えられないので、認めない。(但し、収入印
 紙が貼付された文書が何であったのかが証明されれば、文書の性格に応じて再検討する余地がある。)

 

2 調査旅費

 調査旅費は、「会派の行う調査研究活動のため必要な内外の先進地調査等に要する経費 (交通費、旅費、宿泊料等)」
 (条例別表)である。

 この費目については、①調査研修そのものが「政務調査」として適切かどうか、②旅費の金額が適切かどうか、③燃料代
な どの按分をどうするか、④個別のタクシー代、駐車料等が「政務調査」目的と考えられるか、などが大きな問題である。調査研修が政務調査として適切かどうかは、研究研修費の箇所で述べた原則に従って判断する。

調査旅費の場合、それに加えて、①旅費が実費であること、②旅行の主目的が調査研究であること、③旅行費用が調査
  の目的・効果と対比して適切であること、④旅行先での主な行動が調査であること、などが必要である。

 ⅰ 自動車燃料代

 原則として按分率50%で按分して認める。自家用車を走らせるのには、政務調査目的のほかに、「政務調査以外の政
治活動目的」及び「私的活動目的」のものがあることが明らかだが、これらを区別してそれぞれの割合を明らかにすること
は困難なので、50%が政務調査目的と推定する。

 但し、数台の(登録番号の違う)自動車に給油している場合、同一日に2回もしくは2日連続で大量の給油をしている
場合など、2台以上の自動車に給油していると推定される場合には、一部(原則として後の給油)は認めない。

 なお、洗車代、オイル代は認めない。

 ⅱ タクシー代

政務調査であることが明らか(研修会場への往来など)と考えられるものについては全額認め、政務調査ではないこと
が明らかと考えられるものについては全額認めず、それ以外のものは按分率50%で按分して認める。(ガソリン代と同様
の考え方による。)

政務調査でないことが明らかなものの典型は、夜の飲食街への往来である。認定を客観的にするため、市内に「夜の
街」ゾーン(野田屋町、磨屋町、田町、中央町、柳町)を設定し、「夜の街」で17時以降に降車したもの、19時以降に乗車
したものについては認めないこととした。

また、乗車区間が不明なもの、又は「市内」とのみ表示されているもので、2000円を超えるものは認めない。

議員の自宅と市役所との往来のうち、本会議・委員会開催日の往来の費用は、議員の費用弁償によって別途まかな
われており、重複して費用弁償を受けることは認められないので、政務調査費としては認めない。それ以外の日の目的
不明のものについては、按分率50%で按分して認める。

県外でのタクシー代は、これに対応する研究研修費などの査定結果に応じて認める。対応する研究研修費などのない
ものは認めない。

 ⅲ 駐車料

政務調査であることが明らか(研修参加のための駐車など)と考えられるものについては全額認め、政務調査ではない
ことが明らかと考えられるもの(「夜の街」の夜間駐車、ターミナル地点(岡山駅、岡山空港など)を除く宿泊駐車など)は
全額認めず、それ以外のものは按分率50%で按分して認める。(燃料代と同様の考え方による。)

 ⅳ 長距離市外視察にかかる旅行費用

全体が政務調査であることが明らか(研修出席のための旅費など)と考えられるものについては原則として全額認め、
政務調査が混在していると考えられたものは按分率50%で按分して認め、政務調査ではないことが明らかと考えられる
ものは全額を認めない。

但し、目的が記載されていないものは認めない。(視察の目的が証明された場合には再検討する余地がある。)また、
適切と認められる実費と比較して明らかに多額のものについては、多すぎる部分は認めない。また、日当や、「岡山市旅
費規定に基づく支払」など、実費でない支出は認めない。

政務調査ではないことが明らかなものの典型は、韓国、台湾、北朝鮮等への親善訪問である。これらについては日程
表を入手するなどして検討した結果、①訪問の主目的が「市政の調査研究に資するために必要」とは考えられず、②費
用が調査研究の目的、効果との関係で著しく高額であり、③調査先で市政の調査研究と関係のある実質的な説明や質
疑応答がなされたと考えられず、④行程の主要な部分を観光と宴会が占めていると考えられるので、政務調査に必要な
支出とは認められない。

 ⅴ 近距離市外視察にかかる旅行費用(JR運賃、フェリー代、高速代等)

岡山県内、香川県内、及び西播地域(相生市まで)の市外視察については、政務調査であることが明らかと考えられ
るものについては全額認め、政務調査ではないことが明らかと考えられるものは全額認めず、それ以外のものは按分
50%で按分して認める。

ⅵ 議員本人以外の者の運賃等

 認めない。

 ⅶ その他

目的・内容の記載がなく推定も不可能なものは認めない。但し、目的・内容が証明されれば再検討する余地がある。

 

3 資料作成費

 資料作成費は、「会派の行う調査研究活動のため必要な資料の作成に要する経費(印刷製本費、翻訳料等)」(条例別
 表)である。

 この費目については、支持者に対する市政報告など、「政務調査活動」と「政務調査以外の政治活動」が混在する経費が
 多いことが大きな問題である。「政務調査活動の経費と考えられるものは全額認め、政務調査以外の政治活動と考えられ
 るものについては全額認めず、区別が困難なものについては按分率50%で按分して認める」ということを基本的方針とした。
 なお、資料作成費とは本来「議会審議に必要な資料」の作成費であり、上記のような経費は本来「広報費」もしくは「広聴
 費」の費目に計上されるべきものだが、その点にはこだわらなかった。広報費、広聴費については別の問題がある
 が、その点は広報費の項で述べる。

 ⅰ 写真現像費

政務調査に必要と考えられるもの(視察対象の記録写真など)は全額認める。それ以外のもの(個人質問シーン、「視
 察 している議員」の写真などを含む)は認めない。

ⅱ コピー代

政務調査に必要と考えられるものは全額認め、政務調査ではないことが明らかと考えられるものは全額認めず、それ
 以外のものは按分率50%で按分して認める。(燃料代と同様の考え方による。)

 大量のカラーコピー代は、資料作成費としては本来認められないが、現実に請求されているものは「広報費もしくは広
 聴費」(市政報告をカラーコピーで作成したもの)と推定されたので、按分率50%で按分して認めた。

ⅲ テープ起こし代

政務調査の結果の保存のため必要と考えられるものは全額認め、それ以外のもの、不明のものは認めない。但し、目
  的が証明されれば再検討する余地がある。

ⅳ 情報公開請求費用

 原則として全額認める。

ⅴ その他

上記以外の、内容不明のものは認めない。但し、内容が証明されれば再検討する余地がある。

 

4 資料購入費

 資料購入費は、「会派の行う調査研究活動のために必要な図書、資料等の購入に要する経費」(条例別表)である。

この費目については、議員が購入している書籍、新聞、雑誌のそれぞれが、「調査研究活動のために必要な図書、資料
  等」にあたるかどうかが大きな問題 である。

書籍、雑誌、新聞とも、①一般的ないし一般教養的なもの、趣味的なもの、所属または支援の関係にある団体等の機関
  誌的なものは認めず、②市政についての専門的知識を得るために有用と認められるものについては認め、③どちらにあ
  たるかは、ネット検索等の方法により当該書籍等を直接確認して判断した。

ⅰ 住宅地図

 認めない。住宅地図の主たる用途は個別訪問にあり、選挙対策その他の「政務調査以外の政治活動」の用に供するこ
とが主な目的と考えられる。

 なお、住宅地図以外の地図は「一般図書」とみなし、認めない。

 ⅱ 新聞代(一般的商業紙)

会派控室用の一般商業紙は按分率50%で按分して認める。自宅用、事務所用のものは認めない。(一般に、
     新聞は現職議員でなくてもふつう購読するはずである。)

ⅲ 業界紙・情報紙

原則として認めない。但し、市政に関する調査研究に必要な専門的知識を得るため有益と考えられるものについては
  認める。

 ⅳ 運動誌、政党誌、団体誌

 原則として認めない。(運動、政党、団体への関与は、議員個人の政治的社会的信条または私的関心に基づくもので、
 政務調査とは認められない。)

但し、議員本人の「反対党」と認められる団体の発行誌などは、「政敵の政策の研究」として有益と判断し、認める。

 ⅴ 書籍

市政に関する調査研究に必要な専門的知識を得るため有益と考えられるものについては認める。これに該当しないと
考えられる一般図書については認めない。書籍名の記載されていない支出は認めない(書籍名が判明すれば再検討す
る余地がある)。

行政に関する書式集、法令集については全額を認め、式辞集、辞書については認めない。

 ⅵ 雑誌

市政に関する調査研究に必要な専門的知識を得るため有益と考えられるものについては認める。一般的な商業雑誌
 は認めない。個人の政治的・社会的信条または私的関心に基づくと考えられるものについては認めない。

 ⅶ その他の資料代

雑誌・書籍に準じて判断する。

 

5 広報費

 広報費は、「会派の調査研究活動及び議会活動並びに市の政策について住民に報告し、PRするために要する経費(広報
 紙、報告書等の印刷製本費、送料、会場費等)」(条例別表)である。

 つまり条例別表は広報費について、「調査研究活動」だけでなく「議会活動並びに市の政策」について「住民に報告しPR
 するために要する経費」と定めているので、文章上、研修費等と違って「調査研究」以外の経費の支払にあてても良いかの
 ように読める。

 しかし、

ア 条例の根拠法令である地方自治法第100条第14項は、前述のとおり「議員の調査研究に資するため必要な経費」に
ついて政務調査費を交付する旨定めており、条例がそれを超えて政務調査費の支出を認める趣旨とは考えられないし、
もしその趣旨だとすると法律違反の疑いがあること、

イ 都道府県議会の中には、広報費について岡山市条例と同様に定めている例があるが、全国都道府県議会議長会の
「政務調査費の使途の基本的考え方」は、「住民の意見を議会活動に反映させることを目的としたものであるか否かを基
本として判断すべきもの」としていること、

ウ 市民の意思の収集・把握と関係なく、一般的な広報活動の経費にまで政務調査費の支出を認めると、税金で現職議
員の政治活動一般(再選を目指す活動も含むことになる)を助成することになってしまい、新たに議員をめざす者に比べて
現職を不公平に優遇することになり、憲法違反の疑いがあること、

  から、少なくとも「住民の意見を議会活動に反映させることを目的とする」範囲を超えて、政務調査費から支払うことは許
  されないと考えられる。

  従って、市政報告などの経費は、本来、①「政務調査活動」すなわち「住民の意見を議会活動に反映させることを目的と
  する部分」と、②「政務調査以外の政治活動」すなわち上記以外の部分とを区別して、①の部分の経費だけを政務調査
  費から支出することを認めるべきである。しかし現実には、①②の両部分は市政報告中で混在していて、その割合を定め
  ることは難しい。

  そこで、市政報告などの経費については、原則として按分率50%で按分して認め、例外的に「全部が政務調査と考えら
  れるもの」については全額を認め、「全部が政務調査ではないと考えられるもの」についてはその全額を認めないこととす
  る。

 ⅰ 市政報告類印刷費

按分率50%で按分して認める。

但し、個人質問の傍聴案内や報告に限定された配布物などは、議員の「政務調査以外の政治活動」と考えられるの
  で、認めない。

 ⅱ 同配布費・郵送代

 ⅰに準じ、原則として按分率50%で按分して認める。

 ⅲ 切手・ハガキ

 使用目的が明示され、あるいは他の費用(市政報告の印刷費等)の支出状況から推定できる(市政報告の郵送代な
 ど)切手・ハガキ購入費は、当該使用目的に応じて、全額または按分して認める。

市政報告郵送用と判断される切手代は按分率50%で按分して認める。ハガキの大量購入で政務調査目的との関連
性が不明なものは認めない。ハガキは暑中見舞ハガキや年賀ハガキと交換できるので、流用が容易であるうえ、記
載できる字数が少なく政務調査としての広報には本来不向きなはずだからである。

 比較的少額の切手・ハガキ購入は、事務連絡用のものと推定し、按分率50%で按分して認める。

多額の切手購入で、使途が明示されず推定もできないもの、及び記載されている使途が疑わしいもの(例えば、市政
  報告郵送用と記載されていても、対応する印刷費等の支出がなかったり、疑わしいものなど)は認めない。切手は金券  業者で容易に換金することができるので、これを認めると目的の明示されない現金交付を認めるのと同じになってしま
  う。とりわけ、年度末に大量の切手を購入するのは、当年度の経費の支弁に限定されている政務調査費の剰余を翌年  度に繰り越すことを認めるに等しいので、認められない。
 但し、使途が証明された場合、再検討する余地がある。

そもそも市政報告を郵送する場合、料金別納郵便を利用すれば、大幅に手数を節約できるし、配達先がまとまってい
  れば割引措置を受けることができる。それなのにわざわざ郵送用の切手を大量に買うこと自体不合理であり、よからぬ   魂胆があるとみなされても仕方がない。

 ⅳ 封筒等印刷費

 目的が明示され、または他の費用の支出状況から推定できる(市政報告の印刷費、郵送代など)ものは、使用目的に
応じて、全額または按分して認める。品名不明の印刷費・郵送代、その他の目的の推定が困難なものは、原則として市
政調査報告の送料と推定し、按分率50%で按分して認める。

但し、年度末の多額の印刷費の支出については、①金額、②印刷部数、③単価、④印刷物の種類、⑤現金先渡しの
有無、等について慎重に審査して判断する。特定の会派で年度末に異常に多額の印刷費・切手代が、現金先渡しで支
出されており、年度末に未分配の政務調査費を分配したもので実体がないのではないかと疑われるためである。上の要
 素を総合的に判断して、実体を欠くものと推定される場合は認めない。なお、印刷物・数量を明示しない領収書が多いこ
とは大いに問題である。

 ⅴ 折込み・チラシ広告代、企画・デザイン費

 按分率50%で按分して認める。但し、印刷物等との関連が推定できない企画・デザイン費は認めない。

 ⅵ 食事代

 認めない。

 ⅶ 市政報告会会場料等

 原則として、按分率50%で按分して認める。但し、開催場所及び金額から判断して、飲食を伴うと推定されるもの、及
び過度に高額な会場の費用は認めない。

 報告会の看板代は認めない。

 茶菓代は原則として按分率50%で按分して認める。但し、茶菓代としては高額すぎると考えられるものは認めない。

 ⅷ HP製作費・保守契約費、サーバ利用料

 原則として按分率50%で按分して認める。但し、過度に高額なものは認めない。

ⅸ 市議会発言集印刷費

 認めない。(3ⅰと同じ理由による。)

 

6 広聴費

 広聴費は、「会派が住民からの市政及び会派の政策等に対する要望、意見を吸収するための会議等に要する経費(会場
費、器材借上費、印刷費、茶菓子代等)」(条例別表)である。

 広報費と同様、「住民からの市政及び会派の政策等に対する要望、意見を吸収するための会議等に要する」と定められて
いて、他の費目と違って「調査研究活動」以外の経費も政務調査費から支払っても良いかのように読める。

 しかし、広報費について述べたのと同じ理由により、少なくとも「住民の意見を議会活動に反映させることを目的とする」範
囲を超えて、これらの経費を政務調査費から支払うことは許されないと考えられる。

 そして、広聴費についても、①「政務調査活動」すなわち「住民の意見を議会活動に反映させることを目的とする部分」と、
②「政務調査以外の政治活動」すなわち上記以外の部分とを区別して割合を定めることは困難なので、原則として按分
率50%で按分して認めることにし、例外的に「全部が政務調査と認められるもの」については全額を認め、「全部が政務調査
ではないと認められるもの」についてはその全額を認めないことにする。

ⅰ 市政報告会会場料等

広報費におけると同様、原則として按分率50%で按分して認める。但し、開催場所及び金額から飲食を伴うと推定さる
もの、過度に高額なものは認めない。報告会の看板代は認めない。

茶菓代は原則として按分率50%で按分して認める。但し、茶菓代としては高額すぎると考えられるものは認めない。

 ⅱ アンケート調査委託料、配布費、郵送費

 原則として全額認める。

 ⅲ 議会質問ダビングテープ代

「広聴費」として支出することが適切かどうか、きわめて疑わしい。しかし「質問技術を磨く」ための有用性は否定しがた
いので、按分率50%で按分して認める。

 

7 人件費

 人件費は、「会派の行う調査研究活動を補助する職員を雇用する経費」(条例別表)である。

この費目については、職員の業務が「政務調査活動」か「それ以外の政治活動」かが問題になる。両者を区別して割合を
定めることは困難なので、原則として按分率50%で按分して認めるものとし、例外的に「全部が政務  調査と考えられるも
の」については全額を認め、「全部が政務調査ではないと考えられるもの」についてはその全額を認めな いものとする。

 ⅰ 給与

 原則として按分率50%で按分して認める。

 ⅱ アルバイト給与

 アルバイト雇用目的に応じて按分して認める。目的を推定することが困難な場合には、按分率を50%とする。

 ⅲ 社会保険料

 給与・アルバイト給与に準じ、原則として按分率50%で按分して認める。

 

8 事務費

 事務費は、「会派の行う調査研究活動のために必要な事務に要する費用(賃借料、維持管理費、備品・事務機器等の購入
・リース費等)」(条例別表)である。

この費目については、事務費が「政務調査活動」にかかる経費か、「それ以外の政治活動」にかかる経費か、が問題にな
 る。

 両者を区別して割合を定めることは困難なので、原則として按分率50%で按分して認めるものとし、例外的に「全部が政
務調査と認められるもの」については全額を認め、「全部が政務調査ではないと認められるもの」についてはその全額を認め
ないものとする。

ⅰ 文具系消耗品(紙、封筒、インク、コピー用紙、ラベル等)

 按分率50%で按分して認める。

 ⅱ リース料(コピー機・印刷機)

按分率50%で按分して認める。

 ⅲ 電子辞書

 認めない。辞書は、印刷された辞書か電子辞書かを問わず、議員本人の一般的教養にかかる書物である。

 ⅳ 電話料金・FAX料金

 会派控室、事務所(事務所については2台まで)については按分率50%で按分して認める。

 自宅、携帯電話については按分率33%(私用、政務調査活動、それ以外の政治活動各3分の1の負担率と推定する)
で按分して認める。自宅の2台目以降の電話の料金については認めない。

 ⅴ パソコン・ノートパソコン、プリンタ購入費

 原則として、1人1任期1台に限定して、按分率50%で按分して認める。

 ⅵ コピー機サービス料・使用料

 按分率50%で按分して認める。
 ⅶ カメラ、デジタルカメラ、ICレコーダー、シュレッダー等購入費、パソコンソフト・USBメモリ購入費、バージョンアップ・修理費
   按分率50%で按分して認める。
 ⅷ 事務所賃料
    按分率50%で按分して認める。但し、家主が「自己、親族、もしくはこれらと実質的に同視できる者」の場合は認めない。

ⅸ 事務所用光熱水費、飲料費

 按分率50%で按分して認める。

但し、水質改良機器、及び異常に高額な特殊水・飲料等の購入費は認めない

 ⅹ 事務連絡用切手

 5ⅲに準じる。

 ⅺ 事務所・控室用耐久消費財

 事務用のものに限り、按分率50%で按分して認める。 

 

9 雑費

 雑費は、「上記以外の経費で会派の行う調査研究活動に必要な経費」(条例別表)である。雑費として計上されている経
費は様々なので、1~8の費目中の類似の経費に準じて判断する。

 

第3 会派別の査定結果

1 新風会

 保守系3会派の中では、会派の基準を設けて経理処理をしようとする姿勢がうかがえ、領収書の整理保管などの経理事
務面では比較的適切な処理がされている。また、ガソリン代、電話代、事務所賃料、公共料金等について按分がされている
ことは評価できる。しかし、
①飲食を伴うと推定される会合の費用の支出が6会派中最も多く、うち1件(整理番号1375)。以下、カッコ内の数字で各会
派の整理番号を示す)については会派全体が関与していること、②旅行等の目的が開示された資料から判明しないものが
多数あること、③年度末の切手大量購入や大量印刷が多いこと、④印刷費と郵送料の支出が合致しないものが多数ある
ことなど、不適切な支出が非常に多い。また、按分の対象や按分率は不十分である。

 ⅰ 研究研修費

 飲食を伴うと考えられる会合等(全議員関与)の費用が支出されている(1375)。

 ガソリン代の按分率70%は大きすぎる。

 会合等の目的が政務調査と認められないものが含まれている(日舞公演、音楽会、会食、鉄道OB会など)。

 他の政治活動が混在する会合等の開催・出席費用は、按分すべきである。 団体(議員のネットワークなど)の会費は
認めない。

 ⅱ 調査旅費

 親善訪韓・訪台団の参加費用(33、791、792)は認めない。

調査目的不明の長距離旅行費用(167、199、355、480、721、722、840、974、1195)は認められない。これらについ
  ては「視察報告書」がある旨記載されているが、領収書等とともに開示されなければ意味はない。報告書が開示され
  れば再検討する余地がある。

 他の政治活動が混在する会合等の出席費用は、按分すべきである。ガソリン代の按分率70%は大きすぎる。

 乗降場所不明のタクシー代、目的不明の訪問経費は認めない。1日2回の給油は認められない(331)。

 会合等の目的が政務調査と認められないものが含まれている(祝賀会、鉄道OB会、
 運動会、「送る会」、音楽会、政党懇談会など)。委員会調査等、議会そのものの活動と認められるものは政務調査に
 は該当しない(96、522)。

ⅲ 資料作成費

 内容不明のDP代は認めない。他の政治活動が混在する経費は、按分すべきである。単なる「調査資料」「現場写真」
    など、調査等の内容が不明なものは認めない。

市政報告会の記録写真は、調査のために必要なものではないので、認めない。資料作成のために必要な事務用品
 等の経費は、50%で按分して認めた。

 ⅳ 資料購入費

 費目別査定基準のとおり。一般書誌の購入費、自宅の新聞購読料等の不適切な支出が非常に多い。

 ⅴ 広報費

 飲食を伴うと推定される会場費(59、647、1227)、及び過度に高額な会場費(656)は認めない。

日付のない領収書による印刷費(1022、1273、1274)は認めない。(71、311、358、895、1260、1283の印刷費は、
     市政報告の印刷費としては非常に多額であったり、対応すべき配布費用の支出が見当たらないなどの理由により、認
     られない。成果物が別保管されていると記載されているが、あわせて開示されなければ無意味である。

切手・ハガキの大量購入(502、504、664、665、958、1242、1244、1316、1318、1336、1338)は認めない。

観光絵葉書・切手の購入と判断されるもの(200、201)、私製ハガキ用の切手購入と判
 断されるもの(706、870)は認めない。市政報告のための経費は、按分すべきである。

 ⅵ 広聴費

飲食を伴うと推定される会場費(132、1084)は認めない。

市政報告会会場の看板代(1271)は広聴に必要な費用とは言えない。

市政報告のための経費は按分すべきである。

 ⅶ 人件費

特記事項はない。

 ⅷ 事務費

自宅の2台目の電話料金(456等)、2台目の携帯電話の料金(1000)は認めない。

 事務用品またはそれと推定できる以外の雑貨類の購入費は認めない。

 事務用品費は按分すべきである。

 

2 公明党岡山市議団

 6会派の中では最も適切な処理がされている。特に、飲食を伴うと推定される支出が全くないこと、研修等について資料が
添付されていること、対象の大半が政務調査として適切と認められること、ガソリン代、事務用品費(とりわけ消耗品費)、人
件費等が按分されていること、などについては高く評価できる。

 しかし、長距離の調査旅費の大半が「岡山市旅費規定に基づき」実費によらず支給されていることが重大な問題点である。また、①上記のため長距離視察についての領収書添付が不十分なこと、②岡山市議以外の聴講者もあったと考えられる講
演の費用が按分されていないこと、③日帰り可能な視察につき宿泊費を支出していること、④公明新聞の購読料を支出して
いること、⑤按分対象及び按分率が不十分なものがあることなど、なお不適切な支出がある。

 ⅰ 研究研修費

研修会等の資料が添付されて開示されているのは非常に適切である。他の会派にも見習ってほしい。607、
690、612、613、696にかかる各講演は、岡山市議以外の聴講者もあったと考えられる(607、612、613)の講演では、出
席者35名とされているので明白)のに、講演の費用が出席者で按分されていない。推定出席者数のうち岡山市議の人数
(10名)分の割合に按分すべきである。

 ⅱ 調査旅費

 長距離の調査旅費の大半が「岡山市旅費規定に基づき」実費によらず日当等を含めて支給されていりことが重大な問
題である。また、そのためか、長距離視察についての領収書添付が不十分である。政務調査費は経費実費を弁償する
性格のものなので、「旅費規定」に基づく支出は不適切である。

 699~701の沖縄視察は日帰り可能なので、宿泊費の支出は不適切である。

 ⅲ 資料作成費

 一部、80%で按分している(502)のは不適切である。

 ⅳ 資料購入費

 公明新聞は公明党の機関紙であり、党員または党友(市議は全員いずれかだと思われる)はその立場上、当然に購
読することが期待される性質のものである。従って、会派控室のものであっても、公明新聞の購読費用は政務調査に必
要な経費とは認められない。

 ⅴ 広報費

 市議団ニュース、議員リポートの印刷・配布費用、HP費用は按分すべきである。

 ⅵ 広聴費

 茶代を按分率80%で按分しているが、50%とすべきである。

 ⅶ 人件費

 按分率80%で按分しているが、50%とすべきである。

 ⅷ 事務費

 備品購入費は按分すべきである。

 文具代、FAX費用、リース代を按分率80%で按分しているが、50%とすべきである。

 

3 ゆうあいクラブ

 不適切な支出が非常に多い。特に、極度に不適切な支出の多くが特定の議員に集中しているのにそのまま通用している
ので、会派が個々の議員の支出のチェックを全く行っていないことが明瞭である。按分は事務所賃料・経費のみ行われてい
るが、後記のとおり全部否認される支出なので、ほとんど意味がない。

 ⅰ 研究研修費

 13件しかない支出のうち、領収書が全部または一部ないもの(2、6、13、14。日当の混入が疑われる。)、目的が記載
されていないもの(8、13)が半分近くを占めている。

 ⅱ 調査旅費

 234~240、242~246には前年度の領収書が大量に混入している。議員自身の姿勢に非常に問題があるのみならず、
会派も議会事務局も全く領収書のチェックをしていないことが明らかである。

「夜の街」での夜間または時間不明の駐車料(4ほか多数)、宿泊駐車(147)は認めない。

 115の「バス代」は、後援会のバス旅行代ではないかと疑われる。目的も不明であり、非常に不適切である。

 目的不明の長距離旅費(101、203、207、219)は認めない。

 親善訪問の旅費(96、161~163)は認めない。

 同行者分の交通費(81、201)は認めない。

1日2回(84)または2日連続の給油(133)は認めない。

 目的不明の県外でのタクシー乗車(209)、駐車料(218)は認めない。

 ガソリン代、タクシー代は按分を原則とすべきである。

 ⅲ 資料作成費

 内容不明のDP代等は認めない。

 単なる「要望現場写真」など、調査等の内容が不明なものは認めない。

 資料作成のために必要な事務用品等の経費は、50%で按分して認めた。

 ⅳ 資料購入費

 費目別査定基準のとおり。一般書誌の購入費、自宅の新聞購読料等の不適切な支出が非常に多い。

 ⅴ 広報費

使用目的不明な切手・ハガキの購入(3~5、11、14、15、22、25~28、30、35、36)が非常に多く、特に年度末の切
  手購入が多い。広報費の支出項目が他会派より大幅に少ない(38項目)こととあわせ考えると、完全に異常である。  印刷費の支出を伴わない「企画料」(18、29)は認めない。市政報告のための経費は、按分すべきである。

 ⅵ 広聴費

 飲食を伴うもの(1,6)は認めない。

茶菓代は按分すべきである。

 ⅶ 人件費

 給与は按分すべきである。

 ⅷ 事務費

 旭友会に対する事務所賃料等の一連の支払(94、95ほか)は、①領収書の発行者が議員の後援会と疑われ、
②賃料・ 諸料金そのものの領収書が添付されておらず、③建物所有者が「議員自身と同視すべきもの」と推定される
ので、非常  に不適切である。飲料水の水質改善のための経費(21ほか)は認めない。 

 事務用品費、電話料、リース料等は按分すべきである。

 

4 政隆会

 新風会やゆうあいクラブに見られた、極度に不適切な支出(飲食を伴う会合費、バス旅行代、前年度経費の支出など)は見
られない。他方、計上されて当然と考えられるガソリン代、電話代等の計上が非常に少なく、一方で年度末に帳尻合わせと
疑われる多額の印刷費、パソコン購入費が計上される、というきわめて不可解な経費構成となっていて、年度中に領収書の
整理保管を全くしていなかった形跡が歴然としている。按分は全く行われていない。
ⅰ 研究研修費

 研修会参加費2件、駐車代2件を除く全部がタクシー代である。タクシー代についてはまとめてⅱで述べる。

 ⅱ 調査旅費

 ガソリン代の支出が全くなされておらず、長距離旅費以外の全部がタクシー代である。親善訪韓・訪台の経費
(64~66、216~222)は認めない。

領収書のない、または目的不明の長距離旅費(86、87、123、153、171、242、267)は認めない。これらについては
「岡山市旅費規定による」と注記されており、日当も支出 されていると考えられるが、政務調査費は実費を弁償するもの
なので、非常に不適切である。

これらの結果、タクシー代と駐車料以外には(一部でも)認められる研究研修費・調査旅費は皆無である。

「夜の街」での夜間のタクシー料金(多数)、日付変更後のタクシー料金(238の1)は認めない。

市役所(「大供」を含む)と市議の自宅との間のタクシー料金のうち、本会議・委員会開催日のもの(多数)は認めない。
  (費用弁償により別途支払がなされている。)それ以外の日のものは、全部目的不明なので、按分率50%で按分して
  認める。

 ⅲ 資料作成費

 文具代1件だけが計上されている。按分率50%で按分すべきである。

 ⅳ 資料購入費

 費目別査定基準のとおり。「式辞あいさつ事例集」(48など7件)、住宅地図(61など5件)、業界紙(県民ガイド等)購読
料等の不適切な支出が非常に多い。

 ⅴ 広報費

 15件計上されている印刷費のうち8件、金額にして84%が3月に集中し、そのうち7件が15万円以上の多額である。こ
 れらについては対応する郵送費用の支出がないもの、数量の不明なものが多い。上記7件は全部認められない。

 印刷費の大半について、成果物が別保管されていると記載されているが、あわせて開示されなければ無意味である。
 また、印刷費は按分すべきである。

 ⅵ 広聴費

 17件計上されており、内容は飲料(13件)、切手、ハガキ代である。使用目的の不明なハガキの大量購入(115)は認
 め ない。切手代についてはⅷで述べる。

 ハガキ代、飲料代は按分すべきである。

 ⅶ 人件費

 給与等は按分すべきである。

 ⅷ 事務費

 この費目に、封筒印刷代と切手代の一部が計上されている。使用目的の不明な切手の大量購入(208、209、241、
    242)は認めない。 266のノートパソコン購入代金179,864円は、記載内容から、2枚のレシートを発行日より後にまとめ
    て策せいされたものと推定される。3/23受注・領収の代金が会派からは2/21に支出されていることも不自然である。レシ    ートが提出されない限り、領収書の日付がないものとして取り扱わざるを得ず、認められない。

 321(4/1)のノートパソコン購入代金21万円は、①領収書発行者が販売業者かどうか疑わしいうえ、領収書に品名・台
 数が記載されておらず、②3/23に前記ヤマダ電機でのノートパソコン購入の領収書があり、あまりにも不可解なので認
 められない。

 事務用品費、電話代、リース料、印刷費は按分すべきである。

 

5 市民ネット

 極度に不適切な支出(飲食を伴う会合費、バス旅行代、前年度経費の支出など)は、一部に飲食を伴う会合参加費と推定
されるものがあったが、数は多くない。また、年度末の帳尻合わせを疑わせる支出はない。他方、団体会費、政党誌・運動
誌の購読料が多いことが問題である。また、経費構成が議員によって大きく異なり、特にガソリン代・タクシー代の計上状況
に大差がある。会派内に実効的な政務調査費の使途基準が存在せず、それに基づくチェックもなされていないものと推定さ
れる。按分は、ガソリン代、事務所賃料、携帯電話料についてはされているが、範囲が不十分である。

ⅰ 研究研修費

 対象となる会合等の性格が問題となるもの、飲食を伴う会合等は比較的少ない。しかし議員個人が所属している団体
の会費またはこれに類するものと推定される支出が非常に多い。団体加入は議員の自由だが、それ自体は個人の政治
的・社会的信条または個人的関心によるものなので、政務調査費から支出することは不適切である。それは当オンブズ
 マンの年会費(74)といえども同様である。

 21は「旗開き」参加費であり、4、5とともに、飲食を伴うものと推定される。

 映画上映会(57)、弁当代及びそれと推定されるもの(23、24、84)、内容不明の講演料(83)は認めない。

 ⅱ 調査旅費

 親善訪台・訪朝の経費(1、5、7、8)は認めない。
    調査目的不明の長距離旅行費用(9、72、73、77、79、86、87、95、100、115、188)は認めない。これ以外にも調査目
    的が記載されていなかった長距離旅行費用の支出が多数あった(127、152、153、180、181)が、他の資料から目的を
    推定して認めた。これらの目的不記載の調査旅費が特定の議員に集中していることや、議員個人によって経費構成が著    しく異なることから考えて、会派自身の政務調査費の使途基準やそれに基づくチェック体制は存在しないと推定される。
    県外での目的不明のタクシー乗車料(40、41)は認めない。

深夜、宿泊の駐車料(19、44ほか多数)は認めない。

 目的不明の市内タクシー代・駐車料は按分すべきである。

 ⅲ 資料作成費

 DP代、コピー代、テープ起し料、事務用品費である。これらは原則として按分すべきである。

 親善訪朝写真のDP代等(2~5)は、訪朝・訪台自体が政務調査と認められないので、認めない。目的不明のDP代は
 認めない。

 ⅳ 資料購入費

 費目別査定基準のとおり。一般書誌の購入費、自宅の新聞購読料等の不適切な支出が非常に多い。

 さらに、政党誌、運動誌等の購入代金の支出が多いのが、この会派の特徴である。これらは個人の政治的・社会的信
条または個人的関心によるものなので、政務調査費から支出することは不適切である。

 ⅴ 広報費

 使用目的の不明なハガキ代は認めない。

 市政報告の印刷費、郵送費は按分すべきである。

 ⅵ 広聴費

 会場費、茶菓代は按分すべきである。

 ⅶ 人件費

 市政報告作成・配布のためのアルバイト代は按分すべきである。

 ⅷ 事務費

 使用目的の不明なハガキ代、収入印紙代は認めない。

 事務所賃料と携帯電話料は按分されているが、その余の事務用品費も按分すべきである。

 政務調査費の事務処理のための委託料4万円(3/13、153)は認める。しかし、この時期にそれを委託しなければなら
 ないこと自体が、それ以前の領収書の整理保管・記帳がずさんであったことを示している。

 ⅸ 雑費

 雑費への分類が混乱している。整理・記帳を終えたのちに提出された領収書等があったものと推定され、年度中の領
収書の整理保管・記帳がずさんであったことを示している。

 

6 日本共産党岡山市議団

 研究研修費、調査旅費、資料作成費が全く計上されていない。それらを計上しなくても他の費目の支出で費消しているか
ら不必要であるとの判断と思われるが、①後記のとおりその考え方自体が不適切であり、②会派が計上した支出の中に不
適切なものがあるので、その意味でも判断を誤っている。

 会合等の性格、飲食を伴う支出、年度末の大量支出等は皆無であるが、重大な問題点が2点ある。①所属政党の機関紙
等の購入費を支出していること、②按分を全く行っていないことである。

 ⅰ 資料購入費

 日本共産党、ないしその関係団体が発行する新聞等の定期刊行物の購読料が非常に多い。これらは、幹部党員はそ
の立場上当然に購読することを期待される性質のものと考えられる。従って、共産党所属の市議がこれらを購読する費用
は、政務調査に必要な経費とは認められない。

 ⅱ 広報費

切手の年度末大量購入(46~48、60)は認めない。共産党は市政報告類の郵送を料金別納郵便で行っているの
で、37万円もの切手の年度末大量購入は実質的には政務調査費の繰越しである疑いが非常に濃い。

 市政ニュースの作成・配布費用は按分すべきである。

 ⅲ 広聴費

 懇談会案内の郵送料は按分すべきである。

 ⅳ 人件費

 人件費は按分すべきである。

 ⅴ 事務費

 使途不明(21~23、38、39、42)議会質問シーン(5)の写真DP代、ビデオテープ
 代は認めない。

 55、59は何の支出か全く不明なので、認めない。

 それ以外の事務用品費、リース料、電話代等は按分すべきである。

 

7 複数の会派に共通する事務処理上の問題点

 ⅰ 多くの会派では、会派自身が、政務調査費の使途ないしその区分についての実効性のある基準を有しておらず、
会派自身による所属議員の支出のチェックも行われていないと推定される。その結果、所属の議員の報告がそのまま収
支報告に掲載されるので、会派の報告書の使途区分が非常に混乱し、極度に不適切な支出が一部の議員に集中していても見逃されている。このような状況では、会派を政務調査費の交付先にすることには全く意味がない。

 ⅱ 会派の中には、収支報告への記載と領収書の添付は、政務調査費の交付額の範囲内ですれば足りると考えてい
るものがあると推定される。日本共産党岡山市議団がその典型であるが、この考え方は誤っている。

 政務調査費は、それに該当すると考えられるものを全て記帳及び領収書の整理保管の対象とすべきである。そうしない
と、支出の一部が不適切と判断されたときに、「他にもこれがある」と帽子の中から鳩を出すように次々に別の領収書が
提出される可能性があり(他の自治体にはその実例が多数ある)、非常に不都合である。政務調査費支出の対象となり
うると会派(ないし議員)が考えるものについては、全部収支報告段階で明示し、かつ一定期間経過後の追加を認めない
こととすべきである。「政務調査に要した経費はしかじかの合計200万円であり、そのうち162万円を政務調査費から支出
した」と報告することには、なんの問題もないはずである。

 ⅲ 多くの会派で、規則上記帳を義務付けられている政務調査費にかかる会計帳簿が、年度末もしくは年度明けに領
収書をもとに泥縄的に作成されていると疑われる。このようなものは、本来の意味での会計帳簿ではない。規則上帳簿
作成が義務付けられている以上、帳簿記帳は毎日(それができないのならせめて毎週)行われるのでなければならない。

 ⅳ どの会派でも、「飲食を伴う会合の費用は政務調査費から支出しない」という原則が一応立てられているのであろ
う、と推定される。なぜかというと、①飲食を伴う会合の参加費を支出しているのはどの会派でも一部の議員であり、
②その多くの場合に、飲食を伴うことを隠蔽しようとした痕跡が見られ、③会派ぐるみで支出している例が(新風会1375を
除き)ないからである。このこと自体は評価できるが、その「規制」が尻抜けに終わっている会派が多い。すでに指摘した
とおり、新風会、ゆうあいクラブ、市民ネットでは飲食を伴うと推定される会合の参加費・開催費の支出例があるし、ゆうあ
いクラブ、政隆会、市民ネットでは飲食を伴う会合に出席するための交通費と推定されるタクシー代や駐車料が支出され
ている。これらの会派では、会派としての原則は設けても、個々の議員がそれを遵守しているかどうかをチェックしていな
いものと考えられる。しかし、そのような方法では「原則」の実効性が確保できないことは、現実が証明している。会派
は、政務調査費の使途原則を設ける以上、それを遵守するために、個々の議員が報告する収支明細を審査すべきである。

 ⅴ 報告書や印刷の現物が別に保管されている旨が記載されていても、当該「現物」が開示対象となっていなければ
無意味である。成果物等があることをアピールしたいのであれば、それらを領収書とともに開示しなければならない。

 

第4 査定結果に関する全体的な意見

1 政務調査費の精算にあたって、市議会議長の審査が行われていない。

 条例は、

ⅰ 第5条において「会派は、政務調査費を別表に定める使途基準に従って使用するものとし、市政に関する調査研究の
ための経費以外のものに充ててはならない」、

ⅱ 第7条第1項において「政務調査費の交付を受けた会派の責任者は、政務調査費に係る収入及び支出の報告書を
作成し、これに領収書等の写しを添えて、議長に提出しなければならない」、

ⅲ 第8条において「市長は、政務調査費の交付を受けた会派がその年度において交付を受けた政務調査費の総額
から、当該会派がその年度において市政の調査研究に資するため必要な経費として支出した総額を控除して残余があ
る場合には、当該残余の額に相当する額の政務調査費を返還させることができる」と、各定めている。

また、政務調査費は概算払いとして交付される補助金なので、収支報告書の提出を受けて精算がなされているはずで
  ある。

  上記の条例の条文、精算の取扱い、根拠となる地方自治法の規定等から考えて、会派が議長に提出した収支報告書
  の内容と会派の政務調査費の支出について、議長が収支報告書及び領収書類を審査する権限をもっており、かつ審査
  が現実に行われることが予定されていることは明らかである。

  ところが実際には、条例が予定する審査が行われている形跡が全くない。とりわけ、一部の会派においては、提出され
  た領収書中に、①前年度に支出されたことが明らかなもの、②飲食を伴うことが明記されているもの、など、当年度の政
  務調査費から支弁することができないことが領収書自体から明らかな支出が含まれていたのに、これに関する補正の措
  置は全くなされていない。

  議長が政務調査費の収支報告の審査をしないことは、それ自体条例に違反しており、議長が職務を怠っていることは明
  らかである。議長は今後、自己の職務に忠実に、会派が提出した収支報告書・領収書類について実質のある審査を行
  うべきである。

 

2 政務調査費による費用の支弁の範囲について会派間の隔たりが大きく、会派間に不公平が生じている。

  岡山市議会の政務調査費による費用の支払の運用については、前記のとおり議長による審査がなされていないので、
事実上会派の判断に委ねられている。会派は、多かれ少なかれ何らかの申し合わせまたは原則を設けているようである
が、多くの会派では明らかに、個々の議員が原則を遵守しているかどうかの審査が行われていない。しかもその「原則」が
会派によって大差がある。

 その結果、政務調査費について会派間で著しい不公平が現実に生じている。問題はほとんど全部の費目にわたっている
 が、例としてガソリン代を挙げる。ある会派の議員は議員が使用する自動車のガソリン代を全部政務調査費から支弁して
 いると推定されるが、ある会派ではこれを按分して一定割合だけを支弁している。このような状態は条例の趣旨に反すると
 考えれる。

このような状態が起きている原因のひとつは、条例別表に定められている支出基準が抽象的すぎるため、会派によって
 様々な(多くの場合利己的な)解釈が行われているためであると考えられる。

従って、この状態を解消するために、条例別表を具体化し不適正な支出を例示した支弁基準の細目を定める必要がある。

3 経費の按分の考え方が無視、ないし軽視されている。

 市議会議員の活動は理論的には、政治活動と私的活動とに区分され、政治活動は政務調査費との関係では「政務調査
活動」と「政務調査以外の政治的活動」に区分される。そして、市議会議員が支出する経費の中には、これらの3種類の活
動の経費が混在するものがある。ガソリン代、電話料金、市政報告やHPに要する費用、事務所の維持費、事務所の消耗
品費などが典型的な例である。

 政務調査費から、市議会議員の私的活動の経費や、政治活動に要する経費の全てを支払うことが許されないことは、条
例及びその根拠となる地方自治法の定めから明らかである。また、政治活動の経費全部の支払を許すと、現職の市議会議
員と新たに市議会議員になろうとする者との間に不合理な不公平が起きるので、憲法違反の疑いが強い。

 従って、数種類の活動の経費が混在するような支出については、適切に按分したうえで政務調査費から支出するのでな
 ければならない。
ところがいくつかの会派では、この按分の考え方が全く行われていない。また、按分を取り入れている会派でも、具体的な
按分のしかたは不十分である。

従って、支弁基準の細目を定めるにあたっては、経費の按分の考え方を特に強調し、その具体例を示す必要がある。

 

第5 制度の改善の提言

 本査定の作業中、岡山市議会の政務調査費交付制度に不備が多いことが痛感された。そこで、以下のとおり、制度を改
善することを提言する。

1 交付を受ける者を、会派から個人に改めるべきである。

 岡山市議会の政務調査費は、現在、会派に対して交付されている。しかしながら、

ⅰ 現実に政務調査費の大半は、会派ではなく個人が支出しており、会派に対する交付は実態からかけ離れている。
しかも多くの会派では、会派が議員個人の政務調査費の使用に介入していない(会派としての原則を設けても、それが
遵守されているかどうかを審査していない)。現実に政務調査費を使用するのが個々の議員である以上、議員に対して
交付しても問題はないはずである。

ⅱ 現存する会派には法人格がないと考えられる。

ア 法人格のない者に補助金を交付すること自体、岡山市補助金等交付規則との整合性があるかどうか疑問である。

イ 法人格がない以上、政務調査費について住民訴訟が提起された場合、相手方である会派は訴訟参加をすることも
できない。

ウ 市長が政務調査費の剰余金の返還を請求する場合、法人格のない会派は法的請求の相手方となりえないので、
会派を構成する議員全員に対して連帯責任で支払うよう要求することになる。(少なくとも、現在の制度ではそうとしか
ならない。)

しかし、個々の議員の不当使用が原因で返還義務が生じるのに、それを会派の議員全員が連帯して負担すること
まで想定したうえで、現在の制度が採用されているのだろうか。

ⅲ 会派を交付先とすると、ほかにも以下のとおり、かえって弊害が大きい。

 ア 1人会派が交付先となりうるかどうが、常に潜在的に問題として残ることになる。現在は交付先とされているが、
過去には交付先とされていなかったこともあり、将来について制度的保障があるとは言えない。

 イ 年度の途中に議員が所属する会派を移動する場合や、会派自体が合併・分離等する場合に、政務調査費の処
理事務が非常に煩雑になる。特に、会派が年度途中に消滅した場合、その会派に交付された政務調査費の精算につ
いて、非常に複雑な問題が生じることになる。

 ウ 会派に支給される政務調査費を議員個人が使用できるか否かにつき、前記函館地判のように、非常に制限的に
解釈される可能性があり、混乱を生じるおそれがある。

エ 政務調査費は本来実費を弁償するものなのに、日当を支給している例が現存した。このような事態は、市と議員と
の間に会派を介在させることによって生じている。

オ 次項以下で提言するように帳簿の整備を行うと――というより、現在でもそうされていなければならないのだが――
議員の帳簿と会派の帳簿を別々に作成してその間に整合性を確保しなければならなくなる。この方法を続ければ、
議員と会派の帳簿作成の手数が非常に煩瑣にならざるをえない。

  2 政務調査費についての帳簿をも公開の対象とすべきである。

「岡山市議会の各会派に対する政務調査費の交付に関する規則」第7条は、政務調査費の交付を受けた会派の経理責
  任者は、政務調査費の支出について会計帳簿を作成し、当該政務調査費に係る収支報告書の提出期限の日から起算して5  年を経過する日まで保管しなければならないと定めている。

政務調査費に係る領収書は、平成19年7月分から公開の対象とされたが、上記の会計帳簿はいまだに公開の対象とさ
  れていない。

しかし、政務調査費の使途の透明性を確保するためには、領収書の公開だけでは足りず、会計帳簿の公開が必要である。3 各議員にも会計帳簿の作成義務があることを明示し、会派の会計帳簿とあわせて公開の対象とすべきである。

  前述のとおり、岡山市議会の政務調査費は、現実にはその大半が議員によって支出されている。従って、

ⅰ 現実に経費を支出する議員が帳簿を作成していなければ、会派がまともな帳簿を作れるはずがないのだから、規則
が定めている帳簿の作成義務は、会派だけでなく議員個人にもあると解される。

ⅱ 会派の帳簿を公開対象としただけでは、政務調査費の使途の透明性を確保するには不十分であり、これとあわせて
各議員の政務調査費に係る会計帳簿も公開の対象としなければならない。なお、各議員が作成する会計帳簿と、会派
が作成する会計帳簿との間には、整合性がなければならないことは勿論である。

 また、会計帳簿は、①政務調査費現金出納簿と②政務調査費支出状況表から構成するとともに、領収書の整理のた
めに③領収書整理票を整備し、これらとの整合性を保って日々記帳すべきである。年度末に領収書を整理して捩り鉢巻
で作成するようなものを、法律上帳簿と評価できるか否か、きわめて疑わしい。(われわれの知る限りでは、税務署はそ
れを帳簿とはみなさない。)

4 政務調査費に係る事務処理要領を制定して、支出の項目分類、支出の具体的基準、会計帳簿の様式等を定めるべきで
  ある。

  本査定の過程で、政務調査費の支出の項目区分を各会派が思い思いに行っていること、その結果会派によって同類型
  支出の項目区分が異なること、会派によっては同類型の支出が複数の項目に分散して記載されていること、項目区分そ
  のものが誤っていると考えられるものが多数存在すること、等の事実が判明した。

  また、会派によって、政務調査費から支払うことができると考えられている範囲が大きく異なっていることが判明した。
  この状況から判断すると、各会派が作成を義務づけられている帳簿の作成についても、会派ごとに作成整理状況や記載
  要領に大きな差があるであろうことは、誰が見ても明らかである。

  これでは、①政務調査費の交付についての各会派間の不平等が明らかであり、②各会派の政務調査費の使途状況を
  比較することが、領収書全部を入手して比較検討しなければ不可能なので、政務調査費の使途の透明性が十分に確保
  されない。

  そこで、市議会において政務調査費に係る事務処理要領を新たに制定して、その中で、

 ⅰ 政務調査費の使途について、支出が不適切な経費の例を明記するなど、より具体的な基準を設け、

 ⅱ 実費弁償、経費の項目区分、按分の必要などについての基本的な考え方を明らかにし、

 ⅲ 会派及び議員が調製すべき会計帳簿について基準となる書式を明示し、

 ⅳ 領収書の保管要領、支払証明書で替えることができる要件、領収書整理票及び支払証明書の参考書式等を明示
   すべきである。

なお、本項で要請した改善は、すでに広島県議会で、平成20年度から実施されている。隣県の県議会が実行できるこ
 とを、政令指定都市の市議会が実行できないことはないはずである。