岡山市「政務調査研究費条例案に対する「パブリックコメント」

岡山市議会の各会派に対する政務調査費の交付に関する条例案に対する意見

                                    平成12年2月16日

                                市民オンブズマンおかやま
                                代表   東 隆司

第1.手続について
1.国は,平成11年3月23日の閣議決定により,同年4月から,「行政の意思決定過程の公正確保及び透明性の向上,並びに国民・事業者等の多様な意見・情報の把握」を目的として,省庁共通の統一的ルールに基づいて,パブリックコメント手続を実施しています。この手続によって集められた意見は分類・整理されて公表されています。このたびの岡山市のパブリックコメントの募集は,この国の手続を模倣したものと思われます。

2.ところが,このたびのコメント募集期間は,2月9日から16日までのわずか8日間という異常な短期間です。(国のパブリック・コメント募集期間は通常1か月ですが,それでさえ短かすぎると批判されています。)このような短期間では,個人はともかく,事業者団体や消費者団体は意見をとりまとめることさえ難しいでしょう。これでは誠実なコメント募集手続とは言えません。

3.風評では,この条例案については,議員提案にするか市長提案にするかでもめたために,コメント募集期間が短くなったということです。これがもし事実なら,コメント募集そのものが政治的なパフォーマンスにすぎないのではないでしょうか。

4 岡山市がまじめにこの手続を実施するのならば,
(1)提出されたコメントは全部公表し,
(2)コメントについての当局の考えと対応も公表し,
(3)意見の募集とその検討に十分に時間をとり,
(4)答申や素案の段階で案を公開して,何度か意見を提出する機会を作るべきです。

第2.内容について
1.「条例制定の理念」として、
「政務調査費の使途を明確にするため、規則で使途を限定することとし、その透明性の確保を図るため、経理責任者の設置及び収支報告書の提出を義務付け、報告書の閲覧を通して、自治体に要求される説明責任を全うしようとするものです」とされています。

2.ところが、会派が実際に提出する収支報告書は、私たちがこれまで開示してもらったところでは、きわめて不明朗なものが大半です。

(1)平成12年度の大手6会派(清風会、公明党、政和会、新風会、市民クラブ、岡山21クラブ。所属議員数6〜9名。他の会派は規模が小さく比較に適さないので省略)の収支報告を比較すると、次のようなことがわかります。

ア、旅費、燃料費、使用料及び賃借料の合計額(議員には視察旅費が別に支給されるので、これでまかなわれるのは市内の移動のはずなのに)
 
最大 政和会 510万1512円
最小 市民クラブ 149万5699円

イ、消耗品費(何を消耗しているのか謎ですが)
 
最大 公明党 664万2303円
最小 清風会  58万5295円

ウ、通信運搬費(電話,切手,ファックス代)
 
最大 清風会 261万0198円
最小 公明党  24万5371円

エ、印刷・製本費
 
最大 清風会 241万1271円
最小 21クラブ  38万6225円

オ、食糧費、会費負担金、会議出席者負担金の合計額
 
最大 政和会 156万0773円
最小 市民クラブ  22万8583円

カ、庁用器具費(これも何の器具か謎ですが)
 
最大 市民クラブ 136万3996円
最小 公明党・政和会        0円

キ、図書費(議会図書を利用できるはずなのに)
 
最大 市民クラブ  79万4090円
最小 21クラブ        0円


(2)同じ業種・規模の団体で、このように費目別の支出がちがうということは、経済社会の常識では考えられないことです。(もしやったら、税務署が黙っていないでしょう。)常識で考えれば、これらの収支報告書はただ帳尻を合わせただけで、実際には調査費の相当部分が個々の議員に現金で配分されているとしか思えません。
(3)従って、本気で「透明性の確保を図り」「説明責任を全うする」つもりなら、収支報告書に支出明細書と証拠の伝票・領収証を添付することを義務付けなければ何の意味もありません。

3、現在、「市政調査研究費」は、議会が定めた「要綱」に従って支出されています。ところが、今回の条例案は、現行の「要綱」よりも多くの点で後退した内容になっています。

(1)「要綱」6条3項は、
「研究費は次に定める使途に充てることができない。
(1)交際費的な経費
(2)党費その他政党活動に関する経費」
と定めています。
ところが、今回の条例案には、この要綱6条3項にあたる条項がありません。それどころか、「別に定める使途基準」には(この「基準」案がまた恐ろしく抽象的で、基準の役をなさないだろうと考えられるのですが)、「会派が住民からの市政及び会派の政策等に対する要望、意見等を吸収するための会議等に要する経費」を支出してよいものと考えられています。これは、現在「要綱」で禁じられている、「交際費的な経費」の支出を認めることになるのではないでしょうか。

(2)「要綱」11条は、
「市長は、研究費の交付を受けた会派が第6条3項の規定に違反した場合は,研究費の全部又は一部の返還を求めることができる」と定めています。
ところが、今回の条例案には、この要綱11条にあたる条項がありません。これでは、違法・不当な使途に調査費が支出された場合に、市がその返還を要求しようにも、その根拠になる条文がないことになります。

(3)「要綱」では、「研究費」を使用できる費目が、「要綱」自体の中に(たいへん抽象的ながら)規定してあります。ところが、今回の条例案では、使途は「別途定める基準」で決められること
になっています。この「基準」は、規則の形で制定されると思われるので、そうなると、「調査費何に使ってよいか、よくないか」が、市民の目のとどかないところで好き放題に決められることになります。

4、以上要するに、
(1)今回の条例案ができた目的は、「理念」として説明されているところとはまるで違って、市長の議会に対する(納税者市民を犠牲にした)大盤振る舞いとしか思われません。
(2)本気で「透明性の確保を図り」「説明責任をはたす」ためには、条例は、
次の内容をもったものでなければなりません。
ア、調査費の使途が、条例自体の中で、具体的に限定されていること。
イ、「要綱」6条3項と同じ規定をおいて、支出が禁じられる使途をはっきりと定めること。
ウ、「要綱」11条と同文の規定をおいて、違法・不当な支出があった場合に市長がその返還を要求できることをはっきりさせること。
エ、収支報告書に、支出の事実を証明する領収証等の証拠書類を添付しなければならないこととすること。

             _______________________________________

         <参考資料>
                   ★全国オンブズマンのアクション★            

全国都道府県県議会議長会
会長  渋谷守生  殿
                                              2000年 9月5日
                                     全国市民オンブズマン連絡会議
                                          代表幹事 小野寺信一
                                                 赤塚 和俊
                                                 大川 隆司
                                                  辻 公雄
                                    《連絡先 小野寺信一法律事所》
                          〒980-0811 仙台市青葉区一番町2-11-12-402
                               TEL:022-267-5432 FAX 022-267-5439

               政務調査費に関する申入れ

1 はじめに
 地方自治法が改正され、同法に「条例による会派又は議員に対する政務調査費の交付」の規定が新設されたことから、貴会においては「政務調査費の交付に関する標準条例案」、「政務調査費の交付に関する規程案」を作成すべく、調査委員会を設置し、10月18日にもモデル案を決定すると聞き及びます。

 地方分権の時代といわれ、地方議会の活性化がこれまでにも増して求められる現在、議員の公益目的の調査活動に要する費用の公費負担には一程の理解ができますが、他方で調査費が「第二の議員報酬」と呼ばれたり、立法事務費等の流用による中島代議士逮捕等の不祥事を見るにつけ、その使途は透明性を高くし、議会や市民の批判に耐えうるものでなければなりません。

 このような観点からみると、私たちは、各自治体議会で制定される条例に決定的な影響を与えるであろう「標準条例(案)」「規程(案)」には重大な問題があると考えます。

2 「原案」の問題点について
   私たちが考える「原案」の主な問題点は以下のとおりです。
? 最大の問題は、収支報告書(条例案§8、第2案§9)です。
 別紙様式第1号、第2号は「調査研究費」等8つの支出科目毎に年間支出額のみを記入する様式となっています。これでは議長や市民が支出の適否をチェックすることはできません。

 第2案(§11)は、市民に前記「報告書」の閲覧請求権を認めていますが、その事自身は評価できるものの、開示される「報告書」がこのようなものでは全く意味をなしません。「より透明性をアピールする」(条例案)にはほど遠いものです。

? 規程(案)§6は、会派の経理責任者(及び議員)に、会計帳簿の調整と証拠書類等の整理保管を義務づけていますが、規程(案)、条例(案)ともに議長の調査権限等の規程を欠いているので、上記義務が公費の適正支出をチェックすることにつながりません。

 むしろ、今回の法改正により調査費は地方自治法§233の2の「補助金」ではないとされているので(考え方第1項)、補助金等交付規則による規制も受けなくなり、全く規制を受けないものとなってしまうと考えられます。
? 「政務調査費は会派及び議員の両者に対しそれぞれ別に交付する制度とすること(会派に一括交付し会派から議員に配布する方式は採用しない)。」(考え方第2項)とされています。

 前記のような実質的無規制の調査費が議員個人に交付されることは、会派内の相互批判さえ不可能となります。
? 条例(案)§3、§4は、調査費は「任期が開始する当月分から「(任期満了、辞職、除名、死亡)の当月分」まで、毎月交付するとされています。つまり、始期、終期とも1日でも在職(在籍)していれば、1カ月分全額が議員(及び所属会派)に支給されることになります。

 同様の扱いをしている議員報酬等についても批判が多いところですが、「調査費」は文字通り調査に要する費用であって、本来は必要な調査についてのみ、実費が補填されるはずものです。したがって、「調査費」を議員報酬と同じにする必要は全くないことはもとより、そもそも、在職日数を基準として支給する、という考え方とは相いれないと考えます。

3 申し入れ事項
以上の問題点を踏まえ、原案を以下のとおり修正のうえ、モデル案を作成するよう申し入れます。
1・議長への報告にあたっては、具体的な使途等が明らかになるよう詳細な報告書の提出を義務付け、併せて関係する証票の提出を義務付けるべきこと。 
2・議長による収支報告内容の検査、必要と認めた場合の証拠資料の提出要求及び執行内容が不適正なものと認めた場合の修正命令等の権限が規定されること。
3・議長への報告書は市民に対し、全面的に開示されるべきです。したがって、議会が情報公開の実施機関となっていない地方自治体にあっては、第2案11条の規定を設け、全面的な開示及び謄写を許すものであること。
                                                             以上