情報公開法、運用の問題点
2001.4.22 光成卓明
1.4月2日に,全国の32の市民オンブズマン団体が,28都道府県で,国の省庁・出先に一斉に開示請求を行った。市民オンブズマンおかやまが行った請求は次のとおり。
〔中国四国農政局〕
(1)構造改善課,土地改良管理課,農地整備課の諸謝金の支出伝票類。
(2)同じ三課に係る交際費についての支出伝票類。
(3)漁業生産額検討表・海面漁業生産統計調査等に関する文書類。
〔岡山労働局〕
(4)岡山労働局,岡山労働基準監督署,岡山公共職業安定所の報償費・諸謝
についての支出伝票類。
(5)岡山労働局総務課の交際費についての支出伝票類。
〔岡山東税務署〕
(6)会議費・交際費に関する伝票類。
(7)土木事業にかかる所得標準率及び同取扱要領
注1.「報償費・諸謝金」には,いろいろな支出がはいっている。(外務省の
「機密費」も,「報償費・諸謝金」の名目で支出されている。)
注2.「漁業生産額」は,漁協別の漁獲高を含むデータで,漁協への補助金に
関係する。いままでこのデータは県・市でも農水省でも入手できなかった。
2.問題点
(1)出先機関への「権限委譲」が不十分なため,地方居住者にとっては使いづらい。
a.東京の本省にある情報を地方で請求できない。(出先機関とその下にある役所の文書しか請求を受け付けない。)とりあえず出先で受付して東京に回付する,という取扱を,ほとんどどの役所もしてくれない。これは,総務省作成のマニュアルにそのように書いてあるためらしい。大阪・名古屋では唯一郵政局だけが,東京への回付を認めてくれたとのこと。
b.県内に窓口がない官庁が少なくない。
岡山県内に窓口がないのは,郵政省,旧建設省,旧運輸省,防衛庁,法務省のうち入国管理・刑務・公安部門,農水省のうち林野庁・水産庁関係部門,財務省のうち印刷局部門など。
この場合,岡山にある出先のデータを要求する場合でも,広島なり大阪なり本庁なりにしなければならない。例えば,岡山営林署の「食糧費」を請求しようとする場合,もよりの窓口は大阪の「近畿中国森林管理局」である。また,防衛庁では,各地方1か所ずつ窓口があるが,郵便による請求の受付は本庁でしかしない。
c.県内に窓口がある場合でも,部門別に岡山市内に一か所だけ,というの
が大半である。(確認できたかぎりでは,税務署が唯一の例外で,どこの税務署のデータ
でもその税務署を窓口にして請求できる。)
ということは,例えば津山の人が津山労基署の資料を請求しようとしても,窓口は岡山市にある岡山労働局である。
d.出先機関が窓口になっていない場合に,「その出先機関の公文書」の開示請求を取り次いでくれるかどうかも,省庁によってちがっている。
確認できた範囲では,取り次いでくれるのは財務省印刷局,中国運輸局岡山陸運支局。取次ぎもしてくれないのが,中国地方建設局岡山国道工事事務所,自衛隊岡山連絡事務所。
(たぶん,取次しないところのほうが多いのではないか?)
e.出先機関が窓口になっていない場合に,「その出先機関の公文書」について,説明だけでもしてもらえるか?
これはあたっていないのでわからないが,してもらえないところが多いのではないだろうか。(多分そこまでマニュアル化されていないだろう)
(2)文書ファイル目録をHP化して,各窓口の端末からアクセスできるようにしているが,この検索システムはどこでも有効に機能していない。(膨大なファイルのファイル名しか書かれてないので,そのファイルの中にどんな文書があるのかわからない。)結局窓口で「どんな文書があるのか」聞かないといけない。また,窓口担当者ではどこにどのような書類があるかわからないことが多
く,各部署の担当者が窓口まで出てこないとわからない。
(このへんのことは,自治体ではとっくに経験ずみのことなのだが,省庁は自治体の経験に学ぶということはしなかったらしい。)端末からHPにアクセスするより,プリントアウトのほうが使いよい(と大阪・名古屋は言っている)が,役所によってはこれを見せない。
(近畿財務局の例が最もひどい。手元で見ているプリントアウトを「私個人用のもので見せられません」。「そのファイルにある文書を請求したい」「公務として使っているのだから公文書ではないか」といっても通じない。また,総務省の「情報公開マニュアル」を,「総務省の文書だから,見せ
ることもコピーを渡すこともできない」と拒否。)
(対照的に,大阪地方検察庁では,文書ファイル簿のプリントアウトが2冊そなえてあって閲覧できた。このほうが有効であったとのこと。)
(3)官庁によって,印紙を貼ることを要求するところ(農水,労働など)と,現金納付でよいところ(郵政)があるが,たいていは印紙が窓口にないので,開示のときは印紙を貼るのが面倒になる。また,官庁によって会計費目や文書名がいちいち違っていたりするので,請求のときに注意を要する。(例として,ほとんどの官庁では「食糧費」はなく「費用を伴う会議の支出文書」として請求しなければならないが,検察庁には「食糧費」がある。)
(4)その他の苦情
a.会議支出文書」の請求をしたら「1会議1件」の手数料を請求された。
(近畿郵政局)
b.やたらに請求文言を訂正させようとする。「すべての」「一切の」をいやがる。「これ」とは何を指すのかはっきりさせてほしい,と書き直しを要求する。(名古屋,官庁不明)
c.職員が名札をつけていないし,窓口に来ても名乗らないので,どこの誰だか全然わからない。役人が大勢窓口に集まってきたが,見ているだけで何もしない。(名古屋,官庁不明)
d.入札経過調書を請求したところ,紙ファイルを目の前にもってきて,「これは公開されているものですからご覧下さい」コピーを要求すると,「写しの請求は開示請求をして下さい」(近畿財務局)
e.印紙を貼る際に水で濡らす道具がない。担当者が取りにいったが,数分後「ありませんでした」と手ぶらで帰ってきた。(名古屋,官庁不明)
f.ダイレクト・メール事件の内部調査文書は,はじめ「不存在」といっていたが,あとで「ありました」と通知してきた。(近畿郵政局)
(5)官庁側のズレっぷりがいちばん出ているのが,次の言葉だろう。
(近畿行政評価局。3日に「補正」に行ったところ,担当者談)
「2日はあんなに大騒ぎしてマスコミ総動員でやってきたけれど,きょうは午前1人,午後1人しかこない。情報公開ってそんなものですか」
3.総括(個人的意見)
(1)全体に,官庁側の不慣れ・サービス不足がはなはだしい。(地方自治体の場合にも,施行早々にはよくあることだが,国のほうが度合いが大きいように思われる。)省庁や出先は,地方自治体と比べても,住民にサービスすることにいっそう慣れていないためだろう。
(2)出先への「権限委譲」が不十分なことは,問題が大きい。今のままでは,地方住民にとっては,情報公開法の意義は半減する。早急に声をあげて,見直しを要求する必要がある。
(3)省庁の情報公開についての認識度合いは,かなり低い可能性がある。おそらく,県条例施行当時の岡山県ほどにも達していないのではないか。(岡山県の場合,条例は最悪だったが,運用のほうは,先行の自治体の例を研究したのか,そう捨てたものではなかった)したがって,(請求に対する決定を待たなければ,本当のところはわからないが)開示レベルはかなり低いかもしれない。どんどん裁判をおこしていくことを,いまから覚悟しておくべきだろう。
(国)開 示 請 求&決定
一 覧
文書を特定する為に専門用語?がいりますが、受付担当者に「説明」を求め、記入しましょう。
説明責任がありますので、ジャンジャン聞きましょう。
★開示一覧表集計★
________________________________________
1・中四国農政局 @ 平成12年度海面漁業生産統計調査に関する文書
(担当:東・重田) 平成12年漁業生産額検討表に関する文書
(岡山市漁港関連、別紙10漁港)
★「行政文書不開示決定」★
A 経理課保管に係る、平成12年12月から平成13年3月迄の間の
構造改善課、土地改良課及び農業設備課の諸謝金の支出負担行為決
議書にかかる文書類
★「一部開示」★
B 経理課保管にかかる平成12年12月から平成13年3月迄の間の
交際費に関する支出負担行為決議書にかかる文書類(統計情報部分を除く)
★「一部開示」★
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2・岡山労働局長 @ 岡山労働局の平成12年12月から平成13年3月までに支出された
(担当:光成・須藤) 報償費に関する支出負担行為決議書、振込明細書、支給調書
★「不開示」★文書不存在
A 岡山労働局の平成12年12月から平成13年3月までに支出された
諸謝金に関する支出負担行為決議書、振込明細書、支給調書
★「一部開示」★
B 岡山労働局総務課の平成12年度に支出された
交際費に関する見積書、請求書及び振込明細書
★「一部開示」★
C 岡山公共職業安定所の平成12年12月から平成13年3月までに支出
された諸謝金に関する支出決議書、振込明細書、支給調書
★「一部開示」★
D 岡山公共職業安定所の平成12年12月から平成13年3月までに支出
された報償費に関する支出決議書、振込明細書、支給調書
★「不開示」★文書不存在
E 岡山労働基準監督署の平成12年12月から平成13年3月までに支出
された諸謝金に関する支出決議書、振込明細書、支給調書
★「不開示」★文書不存在
F 岡山労働基準監督署の平成12年12月から平成13年3月までに支出
された報償費に関する支出決議書、振込明細書、支出金調書
★「不開示」★文書不存在
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3・岡山東税務署 @ 土木事業に係る所得標準率及び所得標準率取扱要綱
(担当: 和田) ★「不開示」★文書不存在
A 平成12年12月から平成13年3月迄の間の会議費に関する
会議出席者、支払先、支出金額が確認(発生主義)
★「延長」★第三者の照会多数あり
B 平成12年4月から平成13年3月末の間の交際費に関する
内容支払先、支払金額や確認できる文書(発生主義)
★「一部開示」★